【シナリオ】溺愛社長の2度目の恋
第9話 なら俺が、狙ってもかまわないよな?
○天倉家(朝)
天倉の寝室で夏音が目覚める。
目を開けたもののどこかわからないようで、戸惑っている。
夏音M「昨日……」
と、昨晩のことを思い出し、顔を赤らめる。
夏音、もそもそとベッドを出てリビングに向かう。
天倉「おはよー」
天倉は何事もなかったかのよう、いつも通り朝食を作っている。
天倉「もうできるからね、早く顔を洗っておいで」
夏音、まじまじと天倉の顔を見つめる。
天倉「ん? どうかした?」
夏音「なんでもない、です」
ため息をつき、洗面所に向かう夏音。
夏音「……ひっどい顔」
鏡の中から化粧も落とさず昨日のまま、髪もぼさぼさな自分が夏音を見ている。
夏音「……どんな顔したらいいかわかんないよ」
と、ため息をつく。
(回想)
○天倉家
天倉のベッドの上、天倉にのしかかられる夏音。
天倉「悪い子の奥さんにはお仕置きが必要だよねー?」
天倉がジャケットを脱ぎ、ネクタイを外す。
夏音、なにが起こっているかわからずに、それをじっと見ている。
天倉「……夏音」
耳もとで天倉から囁かれ、夏音がぶるりと身体を震わせる。
天倉「いまからどうなるのか、ちゃんと理解してる?」
天倉、抵抗しない夏音におかしそうに笑う。
シャツのボタンを天倉が外す。
夏音に口付けしようと天倉が身体を屈め、胸もとから指環の通ったネックレスがこぼれ落ちる。
夏音、それを見た途端に天倉を勢いよく突き飛ばす。
夏音「いやっ」
天倉「夏音?」
夏音「いやっ、こんなの嫌……」
夏音、ぼろぼろと泣く。
天倉「……おふざけが過ぎちゃったね。ごめん」
と、苦しそうに顔を歪ませて部屋を出ていく。
夏音「あっ……」
一瞬手を伸ばしかけてやめる夏音。
そのまま、手近にあった枕を抱きしめて泣き続ける。
(回想終わり)
○引き続き天倉家(朝)
洗面所で顔を洗っている夏音。
夏音M「あのまま、有史さんに抱かれてもかまわないと思っていた。でも」
***
フラッシュ
天倉の胸もとから落ちる、指環の通ったネックレス。
***
夏音M「有史さんはいまでも、深里さんを愛している。わかっていたことなのにいま、なんでこんなにつらいんだろう……?」
夏音、鏡の自分を見つめる。
着替えがすんでダイニングに夏音が行くと、すでに朝食の準備ができている。
天倉「先に食べてていいからねー」
と、深里の分の食事を運ぶ。
夏音「はぁーっ」
ため息をつき夏音、椅子に座る。
しばらくして天倉、戻ってくる。
天倉「食べてなかったの? 先に食べててよかったのに」
夏音「ええ、まあ」
と、曖昧に笑う。
天倉「じゃあ食べようか。いただきます」
夏音「……いただきます」
食べながら夏音、天倉をちらちらとうかがう。
夏音M「昨日のこと……有史さんはもう、なんとも思ってないのかな。だいたい、なんであんなこと」
食事が終わり、会社へ出かける準備を済ませる。
天倉「じゃあ、いこうか」
と、さっさと家を出る。
夏音「えっ……」
慌てて夏音、ガレージへ向かう天倉を追いかける。
夏音M「昨日ことには触れないの……?」
○SEオフィス
仕事をしながらちらちらと社長室の天倉をうかがう夏音。
天倉「夏音」
夏音「あっ、はい!」
いつの間にか隣に立っていた天倉へ、慌てて夏音が返事をする。
天倉「ん? ……檜垣が来週、こっち来るらしい。打ち合わせを兼ねて食事に誘われたけど、どうする?」
夏音、立っている天倉と自分の距離を確認。
天倉、いつもよりも少し離れて立っている。
夏音「はい、大丈夫です」
天倉「じゃあ、返事しとくね」
夏音、社長室へ戻っていく天倉を見つめる。
仕事を再開する夏音。
○天倉家(夜)
パジャマ姿で、リビングでくつろいでいる夏音。
パジャマ姿の天倉が通りかかる。
天倉「じゃあ、僕はもう寝るからね。おやすみ」
夏音「おやすみなさい」
天倉、そのまま寝室へ消えていく。
夏音「それだけ……?」
○天倉家(夜)
【一週間後】
キッチンで夕食を作っている天倉に夏音がそっと近付く。
夏音「今日の晩ごはんはなんですか?」
天倉「……!」
夏音が鍋を覗き込み、天倉は一歩距離を取る。
天倉「今日はカレーだよ」
夏音「普通のカレーじゃないみたいですが、なにカレーですか?」
と、距離を詰める。
天倉「キーマカレーだよ」
普通の顔をしながらさらに天倉が距離をあける。
若干、鍋を混ぜにくそうで、それでも自分から離れる天倉に夏音が不快そうに顔を歪めるが、天倉は気づいていない。
天倉「ほら、もうできるから、お皿持ってきて」
夏音「はーい」
なんでもないような顔をして夏音が皿を取りに行く。
夏音が持ってきた皿と深里用の小皿に天倉が料理を盛っていく。
天倉「じゃあ、先に食べてていいから」
と、トレイを持って深里の部屋へと向かう。
夏音、その背中をじっと見つめる。
夏音M「やっぱり、避けてるよね……。もしかして、拒否したのをいまだに怒ってるのかな。それならそれで、はっきり言ってほしい。こんなふうに避けるんじゃなくて」
しばらくして天倉が戻ってくる。
天倉「まだ食べてなかったのかい?」
夏音「ええ、まあ」
夏音、慌ててスプーンを取る。
天倉・夏音「いただきます」
天倉「いつも言ってるけど、僕を待つ必要はないからね」
夏音「……」
夏音、ため息をついてスプーンを置く。
天倉「どうかした? 体調でも悪いのかい?」
天倉も箸を置き、夏音を心配する。
夏音、ふるふると首を振る。
天倉「じゃあ、美味しくなかった?」
夏音また、首を振る。
天倉「それじゃあ……」
夏音「……なんで避けてるんですか」
夏音、俯いたまま小さな声で呟く。
天倉「え?」
夏音「なんで避けてるんですか!? 拒否されたのがそんなに嫌だったんですか!? 不満があるならはっきり言ってください!」
不満をぶつける、夏音。
天倉「ああ……」
と、困ったように笑う。
天倉「別に、夏音に拒否されたからって怒ってないよ。あれは僕の、おふざけが過ぎていたし」
夏音「じゃあ、なんで!?」
天倉「……嫌なんじゃないかなって思ったから」
夏音「……は?」
意味がわからず、夏音が天倉の顔を見る。
天倉「あんなことした僕に触れられるのなんて、嫌なんじゃないかって。だから夏音と距離を取ってたんだけど……。それがこんなに、夏音を傷つけていたなんて知らなかったよ」
と、弱々しく笑う。
夏音「あ、えっと……」
夏音、下を向いてもじもじする。
夏音「別に嫌じゃない、です。いままで通りの方が……」
天倉「ありがとう。じゃあそうするよ」
笑う天倉に、夏音の胸がきゅんとなる。
天倉「すっかり冷めちゃったけど。食べてしまおうか」
夏音「はい」
ふたり、食事を再開する。
○天倉家夏音の寝室(夜)
ペンギンのぬいぐるみを抱いてごろごろしている夏音。
夏音M「まさか、有史さんがあんなに私を気遣ってくれているなんて思ってもなかった」
夏音M「有史さんは私に優しい。優しいけど、私を好きになってくれることはない」
夏音、なにかに気づいたように動きを止める。
夏音「好きに……?」
夏音M「私はもしかして、有史さんを……」
○SE社長室
檜垣と、向かい合って座っている夏音と天倉。
テーブルの上にはイメージ資料などが散らばっている。
檜垣「俺のイメージぴったりだよ! ありがとう、夏音ちゃん」
夏音「いえ……」
と、照れる。
天倉のポケットの中で携帯が鳴る。
画面を見た天倉、立ち上がる。
天倉「ちょっと失礼」
と、携帯に出ながら社長室から出ていく。
檜垣「なあ。確認したいんだけどさ」
夏音「なんでしょう?」
檜垣「天倉さんとは偽装結婚なんだよな?」
夏音「はい?」
わけがわからず、檜垣の顔を見る夏音。
檜垣「ならさ。俺が夏音ちゃんを狙っても問題ないよな?」
檜垣、ニヤリと笑う。
夏音M「なんだか台風の予感がします……」
天倉の寝室で夏音が目覚める。
目を開けたもののどこかわからないようで、戸惑っている。
夏音M「昨日……」
と、昨晩のことを思い出し、顔を赤らめる。
夏音、もそもそとベッドを出てリビングに向かう。
天倉「おはよー」
天倉は何事もなかったかのよう、いつも通り朝食を作っている。
天倉「もうできるからね、早く顔を洗っておいで」
夏音、まじまじと天倉の顔を見つめる。
天倉「ん? どうかした?」
夏音「なんでもない、です」
ため息をつき、洗面所に向かう夏音。
夏音「……ひっどい顔」
鏡の中から化粧も落とさず昨日のまま、髪もぼさぼさな自分が夏音を見ている。
夏音「……どんな顔したらいいかわかんないよ」
と、ため息をつく。
(回想)
○天倉家
天倉のベッドの上、天倉にのしかかられる夏音。
天倉「悪い子の奥さんにはお仕置きが必要だよねー?」
天倉がジャケットを脱ぎ、ネクタイを外す。
夏音、なにが起こっているかわからずに、それをじっと見ている。
天倉「……夏音」
耳もとで天倉から囁かれ、夏音がぶるりと身体を震わせる。
天倉「いまからどうなるのか、ちゃんと理解してる?」
天倉、抵抗しない夏音におかしそうに笑う。
シャツのボタンを天倉が外す。
夏音に口付けしようと天倉が身体を屈め、胸もとから指環の通ったネックレスがこぼれ落ちる。
夏音、それを見た途端に天倉を勢いよく突き飛ばす。
夏音「いやっ」
天倉「夏音?」
夏音「いやっ、こんなの嫌……」
夏音、ぼろぼろと泣く。
天倉「……おふざけが過ぎちゃったね。ごめん」
と、苦しそうに顔を歪ませて部屋を出ていく。
夏音「あっ……」
一瞬手を伸ばしかけてやめる夏音。
そのまま、手近にあった枕を抱きしめて泣き続ける。
(回想終わり)
○引き続き天倉家(朝)
洗面所で顔を洗っている夏音。
夏音M「あのまま、有史さんに抱かれてもかまわないと思っていた。でも」
***
フラッシュ
天倉の胸もとから落ちる、指環の通ったネックレス。
***
夏音M「有史さんはいまでも、深里さんを愛している。わかっていたことなのにいま、なんでこんなにつらいんだろう……?」
夏音、鏡の自分を見つめる。
着替えがすんでダイニングに夏音が行くと、すでに朝食の準備ができている。
天倉「先に食べてていいからねー」
と、深里の分の食事を運ぶ。
夏音「はぁーっ」
ため息をつき夏音、椅子に座る。
しばらくして天倉、戻ってくる。
天倉「食べてなかったの? 先に食べててよかったのに」
夏音「ええ、まあ」
と、曖昧に笑う。
天倉「じゃあ食べようか。いただきます」
夏音「……いただきます」
食べながら夏音、天倉をちらちらとうかがう。
夏音M「昨日のこと……有史さんはもう、なんとも思ってないのかな。だいたい、なんであんなこと」
食事が終わり、会社へ出かける準備を済ませる。
天倉「じゃあ、いこうか」
と、さっさと家を出る。
夏音「えっ……」
慌てて夏音、ガレージへ向かう天倉を追いかける。
夏音M「昨日ことには触れないの……?」
○SEオフィス
仕事をしながらちらちらと社長室の天倉をうかがう夏音。
天倉「夏音」
夏音「あっ、はい!」
いつの間にか隣に立っていた天倉へ、慌てて夏音が返事をする。
天倉「ん? ……檜垣が来週、こっち来るらしい。打ち合わせを兼ねて食事に誘われたけど、どうする?」
夏音、立っている天倉と自分の距離を確認。
天倉、いつもよりも少し離れて立っている。
夏音「はい、大丈夫です」
天倉「じゃあ、返事しとくね」
夏音、社長室へ戻っていく天倉を見つめる。
仕事を再開する夏音。
○天倉家(夜)
パジャマ姿で、リビングでくつろいでいる夏音。
パジャマ姿の天倉が通りかかる。
天倉「じゃあ、僕はもう寝るからね。おやすみ」
夏音「おやすみなさい」
天倉、そのまま寝室へ消えていく。
夏音「それだけ……?」
○天倉家(夜)
【一週間後】
キッチンで夕食を作っている天倉に夏音がそっと近付く。
夏音「今日の晩ごはんはなんですか?」
天倉「……!」
夏音が鍋を覗き込み、天倉は一歩距離を取る。
天倉「今日はカレーだよ」
夏音「普通のカレーじゃないみたいですが、なにカレーですか?」
と、距離を詰める。
天倉「キーマカレーだよ」
普通の顔をしながらさらに天倉が距離をあける。
若干、鍋を混ぜにくそうで、それでも自分から離れる天倉に夏音が不快そうに顔を歪めるが、天倉は気づいていない。
天倉「ほら、もうできるから、お皿持ってきて」
夏音「はーい」
なんでもないような顔をして夏音が皿を取りに行く。
夏音が持ってきた皿と深里用の小皿に天倉が料理を盛っていく。
天倉「じゃあ、先に食べてていいから」
と、トレイを持って深里の部屋へと向かう。
夏音、その背中をじっと見つめる。
夏音M「やっぱり、避けてるよね……。もしかして、拒否したのをいまだに怒ってるのかな。それならそれで、はっきり言ってほしい。こんなふうに避けるんじゃなくて」
しばらくして天倉が戻ってくる。
天倉「まだ食べてなかったのかい?」
夏音「ええ、まあ」
夏音、慌ててスプーンを取る。
天倉・夏音「いただきます」
天倉「いつも言ってるけど、僕を待つ必要はないからね」
夏音「……」
夏音、ため息をついてスプーンを置く。
天倉「どうかした? 体調でも悪いのかい?」
天倉も箸を置き、夏音を心配する。
夏音、ふるふると首を振る。
天倉「じゃあ、美味しくなかった?」
夏音また、首を振る。
天倉「それじゃあ……」
夏音「……なんで避けてるんですか」
夏音、俯いたまま小さな声で呟く。
天倉「え?」
夏音「なんで避けてるんですか!? 拒否されたのがそんなに嫌だったんですか!? 不満があるならはっきり言ってください!」
不満をぶつける、夏音。
天倉「ああ……」
と、困ったように笑う。
天倉「別に、夏音に拒否されたからって怒ってないよ。あれは僕の、おふざけが過ぎていたし」
夏音「じゃあ、なんで!?」
天倉「……嫌なんじゃないかなって思ったから」
夏音「……は?」
意味がわからず、夏音が天倉の顔を見る。
天倉「あんなことした僕に触れられるのなんて、嫌なんじゃないかって。だから夏音と距離を取ってたんだけど……。それがこんなに、夏音を傷つけていたなんて知らなかったよ」
と、弱々しく笑う。
夏音「あ、えっと……」
夏音、下を向いてもじもじする。
夏音「別に嫌じゃない、です。いままで通りの方が……」
天倉「ありがとう。じゃあそうするよ」
笑う天倉に、夏音の胸がきゅんとなる。
天倉「すっかり冷めちゃったけど。食べてしまおうか」
夏音「はい」
ふたり、食事を再開する。
○天倉家夏音の寝室(夜)
ペンギンのぬいぐるみを抱いてごろごろしている夏音。
夏音M「まさか、有史さんがあんなに私を気遣ってくれているなんて思ってもなかった」
夏音M「有史さんは私に優しい。優しいけど、私を好きになってくれることはない」
夏音、なにかに気づいたように動きを止める。
夏音「好きに……?」
夏音M「私はもしかして、有史さんを……」
○SE社長室
檜垣と、向かい合って座っている夏音と天倉。
テーブルの上にはイメージ資料などが散らばっている。
檜垣「俺のイメージぴったりだよ! ありがとう、夏音ちゃん」
夏音「いえ……」
と、照れる。
天倉のポケットの中で携帯が鳴る。
画面を見た天倉、立ち上がる。
天倉「ちょっと失礼」
と、携帯に出ながら社長室から出ていく。
檜垣「なあ。確認したいんだけどさ」
夏音「なんでしょう?」
檜垣「天倉さんとは偽装結婚なんだよな?」
夏音「はい?」
わけがわからず、檜垣の顔を見る夏音。
檜垣「ならさ。俺が夏音ちゃんを狙っても問題ないよな?」
檜垣、ニヤリと笑う。
夏音M「なんだか台風の予感がします……」