距離感
告白
王子に告白しよう。

と、思うようになった。

いや、思うようになってしまった。

自発的に、自分の中でそう思うようになってしまった。

不思議だ。

今迄の人生の中で、誰かに「好き」だなんて、言ったことないくせに。

どうして、そう思えたのだろう。

このモヤモヤから解放されたいからかな?

うん、そうかもしれない。

王子に出逢った日から、心の中にモヤモヤは出来ていた。

恋をするって、しんどい。

一喜一憂する日々は、もうすぐ終わる。

いいじゃないか。

4月から、王子とは顔をあわせなくなるんだし。

いや、でも。

フラれたら、その日から私はどうやって生きていくんだろう?

前は、仕事に逃げたけど。

どうしよう。

怖くなってきた…。

フラれるってわかって玉砕するのって。

凄く馬鹿じゃない?

「ねえ、もし私が当たって砕けたら、どうする?」

朝5時。

外は暗いのが当たり前。

フツー、こんな時間に電話をかけたら非常識だけど。

レイカは夜型なので、この時間帯ぐらいに電話をかけるのが丁度良い。

いきなり、放った言葉に「何それ?」とも言わず。

レイカは「うーん」と考えているようだ。

この静寂な時間帯。

まるで、世界が止まったような、ひととき。

「あんたが砕けたら、その破片を一つずつ拾っていってあげる」

「おぉ!」

「だから、砕けても大丈夫でしょ」

レイカが笑った。

私も笑った。

何て、心強い一言なのだろう。

そして、夜になって。

弟にも電話した。

22時には寝てしまうそうだから。

21時くらいにかけてみたら電話に出た。

「ねぇ、もし私が当たって砕けたら、どうする?」

「姉ちゃんが砕けたら…?」

レイカと同様に「何だそれ」とも言わず。

弟は考えて…。

「どこでもドア使って、すぐに姉ちゃんの側に行くよ」

「…あっそう」

真面目に答えてくれないので落胆すると。

弟は大きく呼吸して。

「それくらいの勢いで駆け付けるってこと!」

と、言い加えた。

安心することが出来た。

無様な結果を迎えたとしても、何とかなる。

惨めな思いするのは目に見えているかもしれないけど。

もう、後悔なんて。

したくない。
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