庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす

side 千晃



 彼女を家に送って会社に戻ってからも、俺の怒りは収まらなかった。

  椎花がいなければあの場であいつを殴っていたかもしれない。だけど背中で怯える彼女の様子が手に取る様に分かったから、なんとか自制心が保てただけのこと。もし次なにかあれば容赦しない。

「社長」

 苛立ちながらもパソコンに向かっていると、桜庭が入ってきた。

「なんだ」
「森永氏からお電話が。繋ぎますか?」

 それを聞いてさらにうんざりした気分になる。

 森永というのは仕事相手で、やや面倒な人物。しかも例の件の打診だろうということは容易に想像できた。何度も断りを入れているのにどれだけしつこいんだ。

「帰ったとお伝えしましょうか?」
「いや、いい。出るよ」

 チカチカと保留ボタンが点滅する電話を取る。何度も携帯に着信が入っていたのには気が付いていた。出ると厄介だから無視していたら、会社にまでかけてきたか。

「代わりました、高宮です」
『おお! 高宮くんか。何度も電話したんだけど、忙しかった?』

 相変わらずドスのきいた声が耳につく。

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