優等生の恋愛事情
◇嬉しくて、恋しくて
「それを“恋”っていうんじゃね?」
澤君は言った。
「それ以外なんだっつーのよ?」
ハルピンも言った。
「だって…………うぅ」
そして、私は頭を抱えた……。
夏休みだというのに学校にいるのは、9月の中旬にある文化祭の準備のため。
2学期に入ると文化祭まで2週間しかない。
だから、うちのクラスみたいに“ちょっとやる気のあるクラス”は夏休みから少しずつ準備を始めているのだった。
被服室にいるのは私たちの3人だけ。
ハルピンから“事情聴取”され、澤君というオブザーバも加わって、被服室は私のための“お悩み相談室”になっていた。
「溝口はどのへんに引っかかってるわけ?」
「だって、そういうふうに考えたことなかったんだもん」
「それって、溝ちゃんにとって三谷氏は男として見られないってこと?」
「そうじゃないんだけど……私ね、三谷くんが女の子だったらいいのにって何度も考えたことあって」
「はぁ!?」
ハルピンは「なんじゃそりゃ!?」と呆れかえった。
「だって……三谷くんは学校で心を許せる唯一の存在で……でも、男子と女子だとやっぱりどうしても境界あるから……だから……」