優等生の恋愛事情
ふたりの夏休み

◇その手を離さないで

遅刻をする人、しない人。

これはもう体質だから仕方がないって、何かで聞いたことがある。

さらに、遅刻をしない人は“待てる人”と“待てない人”に分かれるとか。

私は遅刻しない派。

学校という集団生活で耐性がついたのか、もともとの性格なのか。

待つのは慣れっこだ。

でも――
待たせることには慣れていない。


「ごめんね、この前もだったよねっ」


三谷くんは私を待っていてくれる。


「謝ることないよ。遅れそうだと思って急いだら案外早くついちゃったんだ」


私を見つけた瞬間の彼の優しい笑顔。

嬉しそうで、どこか安心したような、そんな表情にキュンとする。


「溝口さんこそ」

「へ?」

「まだ約束の時間まえだよ」


時刻は午後1時52分。
図書館のエントランスに
待ち合わせ予定より早く集合完了。

私たちって、つくづく優等生体質だと思う。


「僕、時間に正確な人って――」

「え?」

「すごく好きだよ」

「……!」


(三谷くん、反則です……!)


「わ、私もっ……」

「うん。それじゃあ、行こうか」


(私も、すごく好き)


私ってば浮かれすぎ?
過剰反応しすぎ?


(こんなんで心臓持つのかなぁ)

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