優等生の恋愛事情
◆隣はまだ空いていますか?
長かった期末テストが終わって授業も通常へ。
休みだった部活も再開して、ようやくいつもの毎日へ戻る。

昼休み、テスト期間中は教科書を見ながら弁当を食ってる奴もいたけれど、それはそれ。

暢気なもので、今はすっかり夏休みのことで頭がいっぱいだ。

そして相変わらず、男子高校生の胃袋は底なしだ。


「ロクちゃん、それ今日何度目の食事だよ」


僕が呆れて笑うと、親友の六川篤(ろくがわあつし)は「んあ?」ととぼけて、買ってきたばかりの焼きそばパンを手に取った。


「さあなあ。何度目だろうなぁ」


武道系の運動部が頑張っているこの学校で、ロクちゃんは柔道部に所属している。

朝練もあるので、家から持ってきた弁当が昼を待たず腹におさまっても仕方がない。

運動部の連中の食欲とカロリー消費量は半端ない。


モリモリとパンを食らうロクちゃんに、かまってちゃんの四条司(しじょうつかさ)がいつものように絡んでくる。


「おじいちゃん、お昼はさっき食べたばっかりでしょお」

「ほお、そうじゃったかのう? それはそうと……司さん、お昼はまだかのう?」

「もう、おじいちゃんったらぁ~」


(まったく、この二人はいつも……)


「四条もロクちゃんも不謹慎だろ」


僕がげんなり溜息をつくと、二人はいっそう楽しそうに盛り上がる。


「いやん、ミタニンが怒ったあ~、怖~い」

「わーいわーい、諒が怒った、諒が怒ったー♪」


これが僕らのいつものパターン。

ロクちゃんと四条がふざけて、僕がそれをたしなめる。すると、二人は余計におもしろがって、僕が怒って呆れかえる……と。


「ちっとも怖いだなんて思ってないだろ。僕はクララじゃないし」


お約束のいつもやりとり。変わらない日常。


(あー、今日も平和だ)

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