Fairy
『 よく出来ました。 』





晴雷さんが運転する車に揺られて、数十分。

さっきまで眠っていたのもあり、これからの緊張もあり、目が冴えた私はずっと外の景色を見つめていた。
右耳にはめられた無線からは、游鬼さんや狂盛さんの声が聞こえる。
晴雷さんが喋る声は無線からも聞こえるし、私の声も無線を通じてみんなへ聞こえるとのこと。


目的地へついて車から外を見ると、そこは私達がさっきいた街とは違って、とても都会でキラキラしている街だった。

すると、晴雷さんがある紙を私に手渡す。恐る恐るその紙を受け取って見てみると、それは一枚の写真だった。
見た感じだと、20代後半から30代前半の男性。
ハッキリとした顔立ちをしていて、高そうなスーツを身に纏っていた。




『 この写真の男が今回のターゲット。ほら、あそこにいるでしょ? 』




晴雷さんの言葉に、私は窓の外をじっと見つめる。

すると、そこには写真と同じ顔の男が居て、飲み屋の建物の前に何人かの男女と楽しそうに話をしている所だった。


時刻は夜の23時48分。
ターゲットは、夜の街に馴染んでいた。




『 自然とあそこへ行って、ターゲットの近くで…そうだね、足がもつれた振りをして転ける。そうしたら、彼は絶対君に声を掛けるよ。 』




晴雷さんは、絶対に失敗しないと言わんばかりの口調でそう言う。Fairyなんて名前までつけられている人達だし、腕は確かなんだろう。

慣れてるな…と思いながら、私はその言葉に頷いた。




『 で、きっとどこかのお店に入ると思うから…そこでターゲットを酔わせて、僕が指定する場所に連れてきて欲しい。 』

「 …はい、分かりました。 」

『 あとは無線で指示を出すから頑張って。くれぐれも、自然にね 。』

「 …はい。 」



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