Fairy
『 人を殺せない君に、何が出来るの? 』





「 ご飯、出来ましたよ。 」




テーブルの上に出来たご飯を並べて言うと、一番最初に無言で椅子に座るのは狂盛さん。その次に晴雷さんが煙草の火を消しながら座って、最後に游鬼さんがトコトコ歩いてくる。
狂盛さんは皆が座るのを待ち、晴雷さんは『 美味しそうだね。 』と笑い、游鬼さんは『 早く食べようよ〜。 』と、自分が最後に来たくせに、みんなを急かす。




「 じゃあ…いただきます。 」




私が言うと、それぞれが『 いただきます。 』と言ってご飯を食べ始めた。
あれから簡単なご飯は私が作っていて、こうして四人が揃うときは、ちゃんと皆で食事をしている。




『 ねぇ、ひょうも渢さんのとこいほうよ〜。 』

『 渢さんの所?この間行ったばかりだよ。それに、口にものを入れて喋らないの。 』




游鬼さんは物を口に入れながら喋るせいで、何を言っているのかは分からない。だけど、私よりも長く一緒にいる晴雷さんは理解出来ているようで、それがなんだか面白かった。
晴雷さんはそんな游鬼さんを無視して、私を見てから『 美味しいね。 』と笑う。それがなんだか照れくさくて、私も笑いながらご飯を食べた。




あれから数週間が経って、季節はもうすっかり夏。
夜でも蒸し暑いくらいの気温で、クーラー無しじゃ眠れないくらいだ。

最近私に任されたり着いていったりする仕事は少なく、ずっとアジトにこもりっきりだった。
悩んでいた大学も辞めて、友人とも距離を取った。






私はもう、紗來じゃない。紅苺になったんだ。






ご飯を食べ終わった頃、晴雷さんの手元にある携帯が音を立てて震える。
自然とその音に引き付けられ、私の視線は晴雷さんの方へ向いていた。
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