Fairy
『 お前が探してんのは、俺だろ? 』



『 紅苺ちゃん、早く来てよ〜。 』

「 ひゃっ!ちょっ、勝手に開けないでください! 」




パーティを迎えた昼にシャワーを浴びていると、游鬼さんが勝手に脱衣所の扉を開けて入ってきた。
薄い窓越しに游鬼さんのシルエットが見えて、思わず焦ってしまう。

慌ててシャワーを止めてそう言うと、彼は私の言葉が聞こえなかったかのように、お風呂の扉まで開けた。




『 え?なになに、恥ずかしいの? 』

「 きゃぁあ!晴雷さん!! 」




なんの躊躇いもなくズカズカ入ってくる游鬼さんに、思わずそう叫ぶ。
身体を隠すようにしてしゃがみ込むと、私に呼ばれた晴雷さんが『 どうしたの? 』と呑気にやって来た。




『 あ、何事かと思ったら游鬼。 』

『 だってさ、紅苺ちゃん遅いんだもん〜。 』

『 あんまり紅苺をいじめないの。ほら。 』




パーティに行く前に少しシャワーを浴びようと思っただけなのに、待ちくたびれた游鬼さんはお風呂場まで来てしまったんだ。駄々をこねる姿はまるで子供みたいだったけど、やはり憎めない。
結局晴雷さんが游鬼さんを脱衣所から引きずり出し、リビングへと戻っていった。

急いでお風呂から出て、身体を拭いてから用意されたドレスを着る。
前が短く、後ろが長くなっているタイプの真っ白なフィッシュテールドレスだ。




『 僕が髪を乾かすから、その間に游鬼は紅苺に化粧をしてあげて。 』

『 了解〜。 』




濡れた髪をタオルで拭いていると、それを晴雷さんに奪われる。
晴雷さんは、私が自分でしていたのよりも優しくタオルで髪の水気をとった後、ドライヤーを取り出した。

一方、目の前では游鬼さんがいつものように化粧道具を広げている。
前には游鬼さん、後ろには晴雷さん。狂盛さんはと言うと、キッチンでコーヒーを入れていた。
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