今日、私は準夜勤。
勤務に入る前に、病院内の職員食堂でコーヒーを飲みながら、一冊の本を開いた。
蓮君と新婚旅行で行こうと約束した、スペインのガイドブックだ。


あれからすぐに看護部長に相談して、十月に八日間の連休をもらえることになった。
ちょっと先だけど、同僚に迷惑をかけないためには、仕方がない。
それに蓮君も、『そのくらいの季節の方が、観光ベストシーズンだよ』と言ってくれたから、あとはひたすら十月を楽しみに、日々の仕事を頑張るだけ。


旅行が正式に決定してから購入した、このガイドブック。
私は、時間ができるとついつい開いてしまう。


彼が私を連れて行きたいと言った理由が、よくわかる。
どの都市のページを開いても、歴史的なものから近代的なものまで、見応えある魅力たっぷりの建築物の宝庫だ。
美術とか建築には疎い私でも名を知っている、有名すぎる建築家・ガウディの傑作、サグラダファミリアの写真に見入る。
この実物を、秋に蓮君と二人で訪ねるのだ。
そう思うだけで、私の妄想は果てしなく広がる。


きっと、私以上に蓮君の方が興奮する。
彼は私の手を取って、隅々まで案内してくれるだろう。
少年のように、目をキラキラ輝かせて。
私にも理解できるよう、ものすごく頼もしく、観光ガイドをしてくれるに決まってる――。