あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて

甘い香りに包まれたくて

翌日からの颯馬は忙しかった。

ウェディングケーキの打ち合わせや、テレビに露出したせいで、お店に併設したカフェに颯馬目当ての女性客が集まり出して、日に日に話題を呼び、夜遅くまでケーキ作りに追われ始めた。

電話は毎晩かかってくる。

決まって22時。

颯馬はまだ、お店の厨房で一人ケーキを作っている。

その合間に電話をかけてきてくれるのだ。

「もしもし、杏?

まだ、起きてた?」


「起きてるよまだ。

颯馬はまだお店?」

「ん、まだ店。

…会いたいな…。

声だけじゃ元気、充電できないや」

颯馬の言葉に胸がトクンと音をたてた。

颯馬の笑顔と甘い香りが懐かしい…。

会いたい…。

そう思ったら口にしていた。

「…行こうか…会いに…」

「えっ…?

今何て言った?」

「…颯馬の顔がみたいから会いに行くって言ったの!

今から行くから!」

「ちょっ、杏!!

遅いから来るな!俺が行くから」

「ダメ!仕事中でしょ!

私が行く!」

「杏!」

一方的に電話を切り、すでにお風呂に入ったすっぴんの顔に眉毛だけ慌てて描いて、キャップで顔を隠して部屋を飛び出した。

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