想われて・・・オフィスで始まるSecret Lovestory
第3章/薄花桜 —usu hanazakura—



「そこ、もう1ミリ削って」「面を取ってみて」

「はい」
製作の奥村さんの横から画面をのぞきこんで、佐倉さんが指示を重ねている。そのたびに奥村さんがすばやくマウスを操作するクリック音が響く。
奥村さんは、主にDTPオペレーターと呼ばれる作業を担当している。佐倉さんのスケッチをもとに専用ソフトでデザイン画を作成する仕事だ。

パソコン画面を注視している佐倉さんの横顔は、怖いくらい真剣だ。

「老舗文具メーカーからの依頼で、セロハンテープ台のデザインです。機能性とデザイン性を兼ね備えた、“ インテリアの一部になる ” セロハンテープ台をというのが先方のリクエストで」

直斗さんはさらりと教えてくれたけど、なんて難易度の高い依頼なんだろう。

「佐倉さん、模型の試作出来あがりました」
隣の製作スペースから、模型を手がけている森山さんが顔を出す。

「わかったすぐ行く」
画面から目を上げて、佐倉さんが答える。

「多角で仕上げたら、工場に試作の発注頼む」
「了解です」

奥村さんに指示を出して、佐倉さんが製作スペースに入ってゆく。
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