切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
1、憧れの人はカフェのオーナー
「では、私はこれで失礼します」
バッグを手に持ち、オフィスを出ようとしたら、同期の渡辺君が驚いた様子で私を見た。
「失礼します……って、お前、これから部の歓迎会があるのに帰るのかよ」
咎めるようなその口調に思わず怯んでしまう。
私は松本美月。『真田物産』の総務部にこの四月に配属された新入社員で、二十二歳。
ブラウンベージュのボブヘアスタイルで、背は百五十五センチ。猫顔で、友達にはマンチカンに似てるとよく言われるけど、その猫は短足のイメージがあってあまり嬉しくない。
真田物産は日本でも三本の指に入る総合商社。国内外に三十社を超える支店や関連会社を持ち、総従業員数は約十二万人という大企業。
ここ丸の内にある三十五階建てのオフィスビルには、九百人近い社員が働いている。
「新入社員は私の他にも三人いるし、今日はちょっと用事があって……あはは」
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