切愛願望~極上御曹司の庇護欲からは逃げられない~
5、役員としての顔
「私、もう出ます」
美月ちゃんが俺にそう声をかけて、慌てた様子でキッチンを出て行く。
あっ、そういえば、うちの鍵をまだ渡してなかったな。
彼女の後を追いかけて玄関に向かうと、彼女は靴を履いて俺の方を振り返った。
「行ってきます」
笑顔で言う美月ちゃんに、うちのマンションの鍵を差し出す。
「行ってらっしゃい。走って転ばないようにね。これ、うちの鍵」
鍵についている猫のキーケースは昔、俺の祖父がくれたもので、俺の愛用品。
俺がマロンを可愛いがっていたから、祖父がどこかに頼んで作ってくれた。
スペアキーを探す時間がなくて、今使っているものをそのまま渡すことになってしまったが、彼女なら大事に使ってくれるだろう。
「はい。ありがとうございます!」
美月ちゃんは元気よく礼を言いながら鍵を受け取って、玄関を出て行く。
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