彼女になれない彼女
慰める夜
来ない。

時計は20時を回った。

来ない。

ママもソワソワしているのが分かる。

いつも通り、いつも通り、と思ってるのに、平良が店に来ない。

ママが厨房から出てきた。
何回目だろう。

「待てない。もう待てない。お願いだから、沙和、あなたが平良くんのところにご飯持っていきなさい。」
「ええ・・・」

私も気になるけど、どんな顔して持って行けばいいの。

店のドアが開いた。
ハッとドアに目をやる。

常連のおっちゃんだった。
入るなりガハハと笑っている。

私を見つけると、平良がいないことに気付いたらしい。

「平良くん、あれか、県予選、商業高校に今日負けちゃったんだってねえ。でもまだ2年だろ?来年があるもの、そう落ち込むことはないよな。」

何ともお気楽なコメント。
私は苦笑いで返す。

「でも3年生の引退がかかってたんだもの、落ち込むわよ。責任感やプレッシャーだってあるでしょ。」

ママが返す。

「いいんだ、いいんだ、3年が弱いんだもの、何も言えねえよなあ。」

またおっちゃんはガハハと笑った。
今日はちょっと、ちょっとだけイラッとしてしまう。

「私平良にご飯届けてくる。」

ついイラッとして、ママに言ってしまった。
ママが「ありがと。」と言って準備しに厨房に戻った。

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