極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
恋、実り
◇◇◇

実乃里が龍司と夜を過ごしてから、十日ほどが経った十二月の半ば。

冬曇りの空の下、ロイヤルの暖かな店内はモーニングの常連客で賑わっている。


「実乃里ちゃん、コーヒー頼む」

「こっちはトーストセットと食後にミルクティーね」

「かしこまりました。マスター、一番三番のブレンドコーヒー合わせて三つと、洋子さんトーストセットお願いします」

「実乃里ちゃん、ご馳走さん。会計して」


七時半から全力の忙しさで、並みのアルバイト店員ならきっと、こんなブラックな職場は嫌だと逃げ出すことだろう。

けれども実乃里は笑顔を絶やさず、いつも以上に張り切っている。

もうすぐ龍司が来ると知っているからだ。


昨日までの三日間、連日でモーニングに来店した龍司は、『明日も来る』と言って帰っていった。

眠そうな目をしていたのに、早起きしてやってくるのは、自分に会いたいためではないかと、実乃里は期待している。

体を重ねてからの関係もなんら変わっていないというのに、実乃里の自信だけは上昇していた。


(クリスマスイブに、龍司さんをデートに誘おうかな。その日はお泊まりセットを持って出かけないと。新しく買ったセクシーランジェリーで迫って、二度目の熱い夜を……)


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