冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
十二月に市場に投入される新商品なので、カタログ用の写真やCM撮影も行われることから通常よりも早いペースで進められたのだ。

来週のCM撮影が終われば一区切りつくこともあり、彩実の頭の中はもう一棟のモデルハウスのことでいっぱいだ。

展示場の受付ともいえるセンターハウスを抜けるとすぐに目に入る絶好の場所に建っているモデルハウスは、そこから少し離れた区画に建っている二世帯住宅よりも小さな家だ。

ベージュの外壁と茶色の寄棟の屋根が可愛らしい家は、初めて家を建てる若い年齢層向けの商品で、発売以来好調な売り上げを続ける人気商品だ。

発売三年目を迎え、マイナーチェンジを施してさらなる売り上げ増加を狙っている。

販売ターゲットの年齢層を考え、モデルハウスでは今三十代から四十代に人気の小関家具の商品を全室に使うことになった。

小関家具は、創業七十年を誇る老舗で、生産の多くの過程を技術ある家具職人の手で行う有名家具店だ。

安価な外国製品が売り上げを伸ばす中、質の高いものを長く使ってほしいという創業者の言葉に従い、今も大勢の職人の手によって商品が作られている。

「じゃあ、予定していた家具を小関さんにオーダーして、いつ頃納品してもらえるかを確認……あと、それ以外の小さな展示品は、会社に戻ってから最終調整しよう」

彩実はタブレットを見ながらてきぱきと指示を出した。

彼女とともに外構の確認をしていた面々は、引き締まった表情でうなずいた。

この場にいるのは彩実を含むモデルハウス企画運営部の面々で、全国各地の住宅展示場への出展や撤退などを含め、イベントの企画及び運営を担当している。

その中でも今年二十五歳の如月彩実はこの仕事が大好きで、入社以来あらゆる展示場を回り、仕事を楽しんでいる。

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