冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
彼らも本音では、いつか彩実をフランスに呼び寄せてフランスの男性と結婚させ、農園のいくつかを任せたいと思っていたはずなのだが、そんな気持ちはかけらも見せない。

ただ、結婚祝いにプライベートジェットと専属のパイロットをプレゼントするから是非受け取ってくれと言われ、全力で遠慮しているのだが、現在もなおその攻防は続いている。

そのことを諒太に相談したときには、ひとこと「不要だ」と言われ、思い切り顔をしかめられた。

その諒太の顔を見て、彩実はプライベートジェットをこっそり受け取っておこうかなと考えたりもした。

お見合いから今日までの三カ月間、互いに忙しすぎて顔を合わせる機会はほとんどなく、喧嘩をしたり彩実が一方的に責め立てられる機会は少なかったが、これからどうなるのかわからない。

同居が始まれば、毎日顔を合わせるだろうし、相変わらず彩実を気に入らない諒太のことだ、きつい言葉を口にして彩実を傷つけるかもしれない。

そんなとき、すぐにフランスに逃げ出せるように受け取っておくのも悪くない。

とはいっても、プライベートジェットなどどこにどうやって保管しておけばいいのかわからないし、専属のパイロットももれなく用意してくれるそうだが、彩実からの依頼がない日、彼ははどこでスタンバイするのだろう。

調べれば済む話なのだろうが、分刻みに近いスケジュールの中、そんなことを調べる余裕などなかった。

結婚式と展示場のオープンの時期が重なり、彩実は会社と展示場、そして白石ホテルのブライダルサロンを行き来する毎日だった。

途中、マスコミからの取材申し込みや突然目の前に現れてマイクを向けられることが増え、恐怖を覚えた彩実の精神状態が不安定になり、一度だけという約束で記者会見を開いた。

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