蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
第二章

嫌われ作戦と彼のお仕置き



静かなダイニングルームに、ふたりが立てる箸遣いのわずかな音だけが響いている。


「…………」

「……なに?」

「なんでもないです」


 正面の彼の様子をこっそり窺っているといきなり顔を上げられ、慌てて下を向く。


「お、お口に合いますか?」

「ああ。おいしいよ」


 特大の焼き茄子を平らげた蓮司さんはさらっと答えた。

 ……おかしい。真帆からの情報だと、蓮司さんは茄子が苦手だというのに。
 社員食堂で麻婆茄子が出るときは必ず外で昼食を済ませるのだと。


 意中の男の心を掴みたいなら、まず胃袋を掴めと巷では言われている。

 そこで私は考えた。
 嫌われたいのなら彼の胃袋に嫌われればいいのだと。


 同棲を開始して一週間が過ぎ、何度か彼と一戦交えようとしたけれど、口ではどうしても勝てない。そこで私は実力行使に出たのだった。

< 69 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop