過ぎた時間は違っても
一章・心の裏側

放っておいて

人間ってさ、怖いんだよ。でも、動物も怖い。殺気立ちさえすればどんなに小さな動物でも、自分より何十倍も体の大きな生き物を唯とも簡単に殺してしまう。だから、近付かないでくれないかなと切に願う。特にあの男には強く思っている。

「いってきまーす」

「あっ!俺もいってきます。待てよ唯織!一緒に行こうって!」

先に家を出た私の後を走って追い掛けてきたのは柏崎 羽季(かしわざき うい)。私の母の従兄弟の子供だから、私の再従兄弟である男。でも、私は羽季が苦手だった。
性格の不一致が苦手の原因。私は最低でも十五分前に完璧にしておきたいのに、羽季はどれだけ時間が遅れようと関係無し。友達との約束を翌日になるまで忘れていたなんてしょっちゅう。
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