クリスマスのシンデレラ

「自分の誕生日など祝って欲しくない」







高山桃子は声を大にして叫びたかった

誕生日を心待ちにしていたのは
小さな子供の頃の話で



12月1日の今日を持って
28歳になってしまった
今は誕生日など決して
めでたいことでもなんでもない

できれば避けたいと思っていたこの日が
ついに来てしまった






「おめでとう桃子!」

「桃子先輩おめでとうございます」






第二病棟の外科ナースチームは
同僚だろうと先輩後輩だろうと関係なく
アットホームで地元仲間や同期の
ナース達が多くとりわけ仲良しの
集まりなのが特徴だった




その仲の良さは月一のナース食事会や
カラオケ大会など毎回誘えば
誘っただけ参加するといった
不参加率が極めて低いもので





特にみんなに好かれている本日の
チームメンバー内の桃子の誕生日会は

他の病棟の看護師も入り混じって
居酒屋の座敷はナースでごったがえしていた





いつもは桃子もナース達と
飲むのは大好きで毎回楽しんでいるのだが

しかし自分が主役の今回は
とてもじゃないが素直には喜べない気分だった






「ほらっ!ろうそくを消して!」




桃子と同期生の早苗が楽しそうに
小さなケーキを差し出した
それを見ていた後輩ナース麻紀が叫ぶ!





「キャァ!ルジャンドルのケーキ!」


「これなかなか手に入らないんですよぉ!」


「桃子先輩のために今日の昼休みに
並んでGETしたんですよ~」





桃子はいかにも驚いたふりで頬笑んだものの
午後からナースセンターの奥の
冷蔵庫にこのケーキが
入っていたのも見つけていたし


中年太りなのか最近めっきり出てきた
下腹をどうにかしたくてダイエット中なのも
みんなには言えなかった



でもこのパーティのためにみんなが
自分のために色々準備してくれた事を思い

桃子は嬉しそうに笑顔を作り
ナース達のおめでとうの言葉と
プレゼントを貰って大げさに驚いた



さらにケーキを切り分け
丁寧に均等にみんなに配り
軽い冗談を言い合いながら

ケーキを若い子達に進めていても
心の痛みは増すばかりだった







「それともう一つ報告があるんです!」

「あ~!!!いわないで!」

「言っちゃいなよ!言っちゃいなよ!」





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