あなたの愛に包まれて
匡祐の過去
「福山の業績は上がっているはずです。」
匡祐は父に呼び出されて九州の子会社に来ていた。
突然呼び出されて海外へ行くこともよくあることだった。
「今回の婚約は神崎の持つ会社の製品がいくつか欲しいからだ。それを実現させなければ今回の婚約に意味はない。」
父の言葉に匡祐は冷静に答える。
「急を急ぐ内容ではないはずです。現在開発中の福山ブランドの製品で代用も可能になるかもしれない。焦ってもうまくことは運びません。」
「私に口答えをするのか?」
「いいえ。」
匡祐は父から目をそらした。
「力に会っているそうだな。」
「はい」
「その時間があったら神崎へ行って話を進めてこい。お前の役目だろう。」
父は匡祐に厳しい目を向けた。
匡祐は何も答えずただ両手をぐっと握りしめた。
「ここに呼んでやった恩を忘れるな。」
「・・・はい」
父のいる部屋を出てから匡祐は唇をかみしめた。
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