25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
帰宅して、夕飯の仕度をしながら、しかし私は心、ここにあらずの状態だった。


私の知ってる内藤は、仕事が出来て、部下の人望の厚い、理想の上司だった。私はそんな内藤に惹かれ、不倫に走ってしまったのだ。


しかし、どうやら私はそんな内藤の一面しか知らなかったらしい。昼間会った友人の反応でもわかるように、私生活にだらしのない内藤の店での評価は、だだ下がりとなり、最後は多くのパートさん達から総スカン状態だったようだ。


内藤にとって、私は何人かいた遊び相手の1人に過ぎなかった。彼が未練たらしく私を追い掛けて来なかった理由がようやくわかった。


そんな男にのぼせ上がり、危うく大切なものを捨てるところだった自分の愚かさに改めて情けなくなるとともに、そんな自分の目を寸でのところで、覚まさせてくれた夫に、感謝しかない。


それにしても、今の内藤の境遇がわかると、余計に昨日の再会はなんだったんだという思いは拭いきれない。


「昔の女に、泣きつきにでも来たんでしょ。」


友人の言葉が蘇る。まさか、と思う反面、じゃなぜという疑問に明確な答えは出ない。


私は内藤との付き合いは結果的に、3ヶ月程にしか過ぎなかった。だから、私より深い付き合いの女が他に、いっぱいいたに違いない。


それに内藤がもし、そんな思いでこの辺をうろついていたのだとしたら、昨日の私との出会いを無にするはずはない。


あの当時とは、携帯は変えたし、不倫相手に家まで送ってもらうような馬鹿な真似はしないから、自宅だって知られてない、はず。つまりあの男が今更私に連絡をとる術は絶対にない。


あの再会は不幸な偶然、それ以外の何物でもない。私はそう結論づけた。そう思い込もうとしていた・・・。
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