25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
翌朝、約1週間ぶりに顔を合わせた私と渋谷さんだったが、そのよそよそしさは、周囲の耳目を惹いた。


実は、彼女からは昨夜のうちに電話が来た。


『ご迷惑をお掛けしてたなんて、本当に今まで知らなかったんです。申し訳ございませんでした。ちゃんと私の口からご説明します。』


と言う渋谷さんに


「今更、電話でなんか、聞きたくない。明日、仕事終わってから、ちゃんと話してよ。」


とにかく昨日はアタマに来てたから、突き放した答えをしてしまった。実は、今朝になって、少し後悔していたんだけど、と言って、いきなり笑顔を見せる気にもならない。


もちろん仕事上、必要な会話は交わしたけど


「じゃ、子供達の夕飯の支度をしに、1回帰ります。成川さんがお仕事が終わるまでには戻りますから。」


そう言って、仕事場を後にする彼女を、私は冷ややかに見送った。


そして、私が仕事を終え、通用口を出ると、渋谷さんは固い表情のまま、待っていた。


「お疲れ様でした。」


「お待たせ。じゃ、行こう。」


私も固い表情で、そう声を掛けた。渋谷さんとは終わりの時間も休みも違うから、仕事場以外で会うのは初めて。まさかこんな雰囲気で、会うことになるなんて、思ってもみなかった。


私達が目指したのは、このモール内のカフェ「クラウン」。私にとっては、因縁浅からぬ場所で、正直縁起でもないと思ったけど、さりとて、ここは嫌だというのも変なので、仕方なく中に入る。


席に着き、注文を済ませると


「ご心配をお掛けして、本当にすみませんでした。」


といきなり頭を下げて来る渋谷さん。


「成川さんに、不快な思いをさせてるなんて、夢にも思ってなくて・・・お詫びの言葉もありません。」


「・・・。」


「でも昨夜、西野さんがおっしゃったことは嘘じゃありません。土曜日にお会いしたのは事実ですし、その後も連絡を取らせていただいていますけど、それは決してやましいことではありません。実は・・・私達夫婦のことの相談に乗っていただいてるんです。」


渋谷さんは、そう言って、私を見た。
< 120 / 156 >

この作品をシェア

pagetop