そして今もその真っ最中だ。

 いい男の悪巧みをする顔は、なんとも魅力的に見える。

 しかし追い詰められている日菜子はそんなものを感じる余裕もなく、ただただこの
場をどうにか切り抜けようとする思いで頭の中がいっぱいだった。

「なあこの眼鏡、ダテだろ? なんでこんなダサいのかけてるんだ?」

「あっ……やめて」

 拓海は日菜子のセルフレームの眼鏡を奪い取り、かけるそぶりをして度数を確認し
ている。

 日菜子は顔を伏せて顔を必死に隠した。

 どうしても素顔を見せたくない。

「か、返して……」

 必死の日菜子を見ても、拓海は眼鏡を高く掲げて日菜子の手が届かないようにして
いる。その姿はいじめっ子のようだ。

「必要ないだろ、なんでそんなに色々と隠そうとするんだ?」

 大きな体を折り曲げて、顔をのぞき込もうとしてくる拓海を日菜子は必死で躱す。

「そ、そんなの南沢くんには関係ないでしょ?」

「その通りだけどな。でも、気になるんだよ」

 そんなことを言われてもいい迷惑だ。拓海の好奇心につき合ってなどいられない。

「わたしの事なんて、気にしないでっ!」
「気にするなって言われると、ますます気になる」

 顎をくいっと持ち上げられて、無理矢理目を合わすことになる。

 顔を背けようとしても、拓海はそれを許さなかった。

 形の良いアーモンド型の目が、日菜子の心の中をのぞき込むかのごとくまっすぐに
見つめてくる。

 最初は抵抗をしていた日菜子もその視線に捉えられて、目をそらすことができない。

「なぁ、こんないい目してるのになんで隠してるんだ?」

「な……なに言って」

「なあ、俺に教えろよ。お前の全部――――」

 拓海の言葉に日菜子は息をのみ、微動だにできない。


 ただ心臓が痛いくらいにドキドキと大きな音をたてていた。