キミの足が魅惑的だから
プロローグ 魅惑的な足は突然に
「ああ、だるっ」と俺は火の付いていない煙草を口に咥えたまま、壁に寄りかかっていた。

「どいつもこいつも……ふざけやがって」

 お飾り営業課長と陰で罵って笑ってるだけならまだマシだ。仕事が上手くいかない理由を、俺のせいにしてんじゃねえよ、くそ野郎どもが。

 お前らができねえだけで、俺のせいじゃねえっての。気づけ能無しが。

 昼食を終えて午後の気怠い時間帯……仕事の効率が落ちる。失敗も増える。指摘したら、不機嫌な顔で睨まれて。何も言わずに修正しといてやれば、図に乗ってくる。部下って扱いづらくて面倒だ。

 営業のオフィスに戻るの気が一向におきない。むしろこのまま、ずっと……就業時間がぎりぎりまで隠れていたいくらいだ。

 滅多なことでここには人はこない。薄暗く少し肌寒い室内は、俺には最高の隠れ家で会社で唯一ホッとできる場所だ。

 そのドアの取っ手がガチャリと捻られると、ガツンっと荒々しい音ともに赤いヒールと引き締まった足首が視界に飛び込んできた。

(えーー?)

「うちの部署の男どもめが! 使えないっ」

 蹴破る勢いでドアをヒールで押し開いた隙間から、スーツ姿の女性が入ってきた。蹴る際に足を大きく開いたためか、スカートが太ももまでずり上がっている。むちっとした張りのある魅惑的な太ももに、思わず俺はごくりと生唾を飲み下していたーー。
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