real feel
「……待ってます。私だって主任しか」

これから私の想いを口にするところだったのに。
またその言葉は主任の唇に奪い取られた。
塞がれた唇の隙間から漏れるのは言葉ではなく、熱い吐息。

きっと主任には私の想いなんてお見通しなんだろう。
だっていつでもこうして私が欲しいキスを存分に与えてくれる。
私は主任しか知らないし、主任しか要らない。
貴方のキスでこんなにも幸せになれる、自分が好き。
そして、それ以上に貴方のことが……大好き。
その熱い想いを私もキスに込める。
私の気持ちがちゃんと伝わるようにと、情熱を込めて主任の唇を追いかけるように触れ合わせていく。
このままずっとずっと、主任とくっついていられたらいいのに……。

どれくらいの間、私たちはキスを交わしていたのだろう。
唇を離してからも、私の頬を撫でたり髪を鋤いたり、まぶたやおでこや耳元に唇を落としたり、今夜の主任は私を甘く溶かす。


甘い甘い時間をひとしきり堪能した後、急に現実に引き戻される。

「で、出張の同行者は誰?1泊するんだよな、まさか……迫田じゃないだろうな」

「違います!上村課長です」

「女課長か。広報は出張が結構多い部署だから、この先もし男と出張なんてことになったらと思うと気が気じゃないな」

「私だって気が気じゃありませんよ。もしも、主任が高柳さんと出張とか……」

「それはない。高柳は俺のパートナーじゃないし、有り得ない。パートナーだったお前ともなかっただろ?」

確かに、主任と出張なんてなかった。
じゃ、安心していいのかな?

「……1年前の今頃は、こうなってるなんて想像もできなかった」

「私も。まさか、広報に異動になるなんて思ってませんでした」

主任と部署が離れるのが辛いなんて、想像もできなかった。

「……まあいいや。今週末は覚悟しておけよ、まひろ」

「えっ!?」

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