real feel
佐伯さんとの話が一段落したところで、佐伯主任のことを考えていると、近くにいた男性から遠慮がちに声をかけられた。

「すみません、ちょっとよろしいですか……?」

「は、はい。何でしょうか」

「シャイニングの蘭さんですよね。私、邦都市にある"本宮総合病院"に勤務しております、本宮です」

「初めまして、蘭です。本宮さんって、もしかして院長先生でいらっしゃいますか?」

"本宮総合病院"って私でも知ってるくらい大きな病院だ。

「いいえ、院長は私の兄です。私は精神科の医師なんです。失礼ですが、蘭さんのお父様は"蘭会計事務所"の蘭先生ですよね?」

……どうしてここで父の話題が出てくるのだろう。

「はい、そうですが」

「実は、折入ってお話させていただきたいのですが。私とではなく、会ってもらいたい人がいるんです。すぐ近くで待っているんですが、この場所ではちょっと……」

「蘭さん、今日はよく頑張ってくれて……あら、本宮先生じゃありませんか!」

上村課長が私たちのところにやって来た。
課長と本宮先生は面識があるようだ。

「上村さん、お疲れさまです。実は蘭さんに会ってもらいたい人を近くで待たせているんです。交流会の途中で申し訳ないのですが、少し蘭さんを外に連れ出してもいいでしょうか?」

「ああ、例の件ですね。他でもない本宮先生からの依頼ですから、断るなんてできませんよ。蘭さん、先生と少し外出してきてくれる?時間は1時間くらいで大丈夫ですか?」

「ええ、十分だと思います。私が責任持って連れて戻りますから」

私に会わせたい人って、誰?
突然何なんだろう。
だけど上村課長からの指示だし、断れるような雰囲気ではない。

「分かりました。課長、行って参ります」

本宮先生に促され、会場を出る。

「近くのカフェで待ってるから。急な話でごめんね。今日みたいなチャンスを逃す手はないと思ったら、どうしても黙っていられなくてね」

一体、誰が待っているの?

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