real feel
まひろの母さんは俺との付き合いに関しては寛容で、反対されたりすることはない。
ただ1つだけ……『これだけは守って』と約束させられた事があるけど。
それは俺がきちんとすればいい話で、決して難しいことじゃない。

俺とまひろにとって、大事なこと。
特に、まひろにとっては。
だから俺はその約束だけは必ず守ると誓っている。

本音を言えば、直ぐにでも結婚したい。
出来るだけ早い方がいい。
ただ、現実問題として、それは無理な話だ。
俺はいいとしても、まひろには家族の事情もあるし。
少し体が弱いまひろの母親は離婚しているし、高校生の双子の弟や小学生の妹もいる。
だからせめて、弟たちが高校を卒業するまでは難しいのではないかと推測しているところだ。

だからこそ、この旅行は2人きりの貴重な時間なんだ。
これからは、会社でもずっと一緒にいられなくなってしまったし。
休みが明けたら、離ればなれなんだ。


「まひろ……」

もう一度キスをしながら、ベッドに腰掛けている体を優しく横たえてやる。

「んっ……ま、待って」

唇が触れ合ったままで、強引に発言しようとする彼女に意地悪したくなり、待つどころか更にキスを深めていく。
ところがそのまま流されるかと思った彼女からの反撃で、胸をグイグイと押し返され、不本意ながらも体を手放す。

「ご、ごめんなさい。だってまだシャワー浴びてないし……」

ああ、確かに。
俺は気にしないけど、まひろはそういうところ気になるらしい。

「……分かった。じゃあ今日は誕生日だし特別に一緒に」

「あの、ほら、ホテルのバスルームって狭いから……。お先に!」

そう言うが早いか、着替えやらなんやら素早く手に掴んで、バスルームへと駆け込んでいった。

ちぇっ、お預けか。
ベッドに1人虚しく寝転がると、さっき頭を過った受け入れがたい現実がまた甦ってくる。

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