【今治発地域ドラマ】恋を始めてもいいですか
第10話
アタシとけいすけさんの5度目のデートは、いまこく(今治国際ホテル)へ行った。

この日は、ブライダルフェアが催されていた。

二人は、フェアに参加した。

アタシとけいすけさんは、いろんなところを回りながら『こんな衣装が着たいな』とか『こう言う披露宴を挙げたいわね。』などと言いながらフェアを見て回った。

そんな中で、アタシは有名カリスマモデルさんがプロデュースした白のウェディングドレスを試着した。

ウェディングドレス姿のアタシは、けいすけさんの前でほほえみを浮かべながら言うた。

「ジャーン!!どうかしら?」

けいすけさんは、目を細めて喜んだ。

「いいね。お姫さまみたいできれいだよ。」
「じゃあ、これにしようかな?」

アタシとけいすけさんは、楽しみながら挙式披露宴の準備を進めた。

いまこくを出たふたりは、新居探しに行った。

最初のうちは小さくても、借家住まいから始めて、おカネが一定金額に達したら土地を買って、一戸建ての我が家を建てたい…

そんな思いが、二人の中で高まった。

それから二人は、エディオン(家電量販店)へ行って寿家電セットを注文して、ニトリ(家具屋さん)に行って、ブライダル家具の注文をするなど、結婚生活を始める準備を整えた。

アタシとけいすけさんは、9月の大安吉日の土曜日にいまこくで挙式披露宴をとり行うことを決めた。

それから4日後の昼休みのことであった。

ところ変わって、東村の旧国道沿いにある大型ショッピングセンターにて…

アタシは、オムライス屋さんであきのりと会って、ランチを摂った。

ランチを終えたアタシとあきのりは、食後のコーヒーをのみながらお話をした。

アタシは、あきのりにけいすけさんとの結婚が決まったから披露宴の司会のお願いした。

しかし、あきのりはつらそうな声で披露宴の司会を引き受けることができないと言い返した。

「ごめん…結婚披露宴の司会を引き受けることが…できない…」
「引き受けることができないって…どうしてよ?」
「正直に言うて、オレは…心苦しいんだよ…」
「心苦しい?」
「ああ。」
「どうして?」

アタシの問いに対して、あきのりはつらそうな声で答えた。

「オレ…ホンマのことを言うと…もう一度…お前と恋を始めたい…と…思っているんだよ…」
「あきのり。」

この時、あきのりがまだアタシのことを愛していると言うことに気がついた。

あきのりは、アタシに今まで言えなかった思いを必死になって伝えた。

「なあはるか。」
「あきのり。」
「はるかは…どうなのだよ?」
「何が?」
「はるかはまだ、オレのことが好きなのかよ!?」

アタシは『あきのり、何を言っているのよ。』ととまどい気味の声で言うた。

あきのりは『もう一度お前と恋がしたいのだよ!!』と力強く言い返した。

そして、アタシに妻とリコンすることを伝えた。

「オレ…あした…離婚届を出す…」
「リコン?」
「ああ。」
「どうして奧さんと離婚するのよぉ?」
「はるかのことが好きだから妻と離婚する…理由はそれだけ…」
「あきのり…あんたはそれでいいと思っているの!?…お子さんはまだ小さいんでしょ!?…どうするのよこれから先…あきのり!!」

あきのりは、ますますヤッキになった声で言い返した。

「妻と今後のことを話し合った…だから…明日市役所に離婚届を出す…」

アタシは、あきのりにもう一度奥さんと話し合うようにと言うた。

「あきのり、もう一度奥さんと話し合ってよぉ~」

あきのりは、怒った声でアタシに言い返した。

「イヤ!!話し合わない!!」
「なんで拒否するのよ!?」
「オレは…まだはるかを愛してる…はるかじゃないとダメなんだよぉ~…オレは、妻の実家から非難を浴びる覚悟で、お前にコクった!!なあ、はるか…答えろよ!!お前は今でもオレのこと好きなんだろ!!」

あきのりは、ものすごくコーフンした表情でアタシに言うた。

「オレは…本気ではるかのことが好きなんだよ!!」
「あきのり。」
「妻の兄が借金を抱えている…『多額の借金を抱えている兄を助けてほしい。』とオレにせがんできた…妻はふざけている…『たった一人しかいない兄を助けてほしい。』と言うけど、オレはバカ義兄(アニ)の尻ぬぐいをするのはごめんだと言うて、妻とひどい大ゲンカを起こした…妻は大声でおらんで(さけんで)、オニだの血も涙もない人と言うた…妻はふざけている…だからオレは離婚した妻に対して『子供の養育費は1文も払わないから、てめえの自腹で養育費を工面せえ!!』と怒って…妻と子供に…きつい言葉をぶつけたあと…家出した…そして…」
「明日、離婚届を市役所に出すのね。」
「ああ。」

あきのりは、コーヒーをひとのみしてからアタシに言うた。

「オレは、実家の親や兄夫婦や姉夫婦や親せきの人たちにお願いして…親類の人の知人の知人の…そのまた知人の弁護士さんを介して妻の家とゼツエンした…だから明日、離婚届を市役所に出す…これで分かったか?」
「あきのりの事情はよくわかったわ…それよりも、あきのりの妻のお兄さんの借金の問題はどうするの?」

アタシの問いに対して、あきのりはこう答えた。

「妻の兄の借金については、裁判所に破産宣告をして問題を解決させた…義兄(アニ)は過去に暴力事件を起こしてケーサツに逮捕された前科がある…だから、妻の家と絶縁した!!…もういいだろ…これで十分に分かったやろ…」
「あきのり。」
「妻と離婚して…もう一度はるかとやり直したいと思っていた…けれど、はるかに新しい恋人ができたと聞いたから残念だ!!…はるかとサイコンできないのであれば…ひとり身で生きて行く…好きなコも嫁さんも…もういらない…もういいよ!!」

あきのりは、席を立った後アタシに突き放す声で言うた。

「それともう一つ…オレ、きょう…会社に辞表を出した!!」

あきのりは、アタシに会社をやめたことを伝えた。

「どうして?」
「お前の新しい恋人が働いている場所の近くの会社で働いている…けれど、お前の新しい恋人が気に入らないからやめた…ただそれだけや!!」
「あきのり!!そんな小さなことで会社やめたら、この先どうするのよ!?」

アタシがそのように言うと、あきのりはアタシに激しい怒りをぶつけた。

「お前なあ、相手がかわいそうだからと言う理由で同情的になっていることに気がつけよ!!」
「あきのり!!けいすけさんは、お母さんを亡くして、お父さんもジョウハツして…」
「そこが同情的になっていることに気がつけよボケ!!」
「あきのり!!」
「もういいよ!!」

あきのりはアタシに食事代の伝票を突きつけたあと、突き放す声で言うた。

「ここの食事代、お前が払っておけ!!オレの気持ちを逆なでにした仕返しだ…フンッ!!」

あきのりは、オムライス屋さんを出たあとどこかへ行った。

何なのよあきのりは…

けいすけさんとアタシのことをボロクソに言うなんてあんまりだわ…

アタシは、むくれた表情であきのりの後ろ姿を見つめた。
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