【完】俺様彼氏は、甘く噛みつく。
駆くんの一番きらいなこと
◇
「今宵……大丈夫?」
「うん」
学校ではルイちゃんがあたしを毎日励ましてくれていて、本当に申し訳ない気持ち。
「全部聞いたけど……でもほら、廃品回収の時も墨汁事件の時も、好きじゃない人にそこまでするかなあ?」
「……あたしもそれはね、引っかかるところなんだけど」
「でも“不純な動機”って本人が言ってたんだもんなぁ……。しかも好きとも言ってくれなかったわけだし……。ああわかんない。ごめん今宵、駆くんと付き合うとき“このチャンスに男慣れだ”とか思っちゃって。ちゃんと止めればよかったね」
後悔みたいな言葉を聞くと、首を横に振りたくなる。
駆くんは違っても、あたしはもう本気で駆くんが好きになっちゃったから……。
付き合わなかったらよかったなんて絶対に思えないの。
だからこそ、こんなに苦しいんだって思う。
そんな夏休みも翌日と迫った日の放課後。
「衣川さん。ごめんね、急に」
音羽くんに話があるって言われて、教室に残っていた。