気づけばいつも探してた
5.一大イベントの裏で
5.一大イベントの裏で

「矢田さん!Y大病院から3名追加で来場するらしい。食事の追加頼む!」

「はい!すぐに連絡しておきます!」


「ほら、矢田さん、マイクの調子悪いらしいぞ、どうなってる?」

「えー、この間は大丈夫だったんですけどね、電池切れかな?すぐ確認してみます!」


「おい、グローバルメディカル部の矢代部長はまだ来られてないぞ」

「すみません、すぐに秘書に確認します!」


朝から慌ただしい総務部内。

今日は年に一度開かれる、アメリカの大手、メディカルアート社とわが社が共同開発している新薬のプロモーションで取引先と有名医療系大学や大学病院の重鎮たちを数多く招いている。

本社近くのホテルの1フロアを借り切って会社挙げての一大イベントだ。

総務部は営業のグローバルメディカル部と共同でこの行事の運営管理を任されているもんだから、今日は株主総会と並ぶくらい忙しい一日になる。

もう10月末だというのに、額に滲んでいる汗をハンカチで拭いながら本社とホテルの間を駆け抜けた。

ホテルのフロント前を早足で行き過ぎ、エレベーターで会場のある三階に上昇する。

エレベーターの扉が開くと同時に腕時計に目をやり、そろそろ受付開始の時間であることを確認した。

会場前に設置された受付には、多数の顧客の受付を速やかに行うため営業、人事、総務から選りすぐりの女性スタッフが配置されている。

受付に整列した女性スタッフの中に私もそっと滑り込んだ。

一応私も選りすぐりの一人なわけで。
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