イケメン不良くんは、お嬢様を溺愛中。
Chapter3

デートで危機一髪!


想いが通じ合って、私は晴れて剣ちゃんと付き合うことになった。

今日は恋人同士になって、初めて迎えた休日。

せっかくなので、剣ちゃんと駅前のショッピングモールに来ていた。


「お前、お嬢様だろ。こんなショッピングモールで買い物とかするんだな」


隣を歩いていた剣ちゃんは、意外そうに私を見る。


「前にも話したと思うけど、私のお母さんは一般家庭で育った人だから、話に聞いてて行きたくなっちゃって」


お父さんは歴史のある政治家一族の御曹司だったから、なんでも身の回りのことを自分でするお母さんに衝撃を受けたらしい。

自分で生き抜く力みたいなものをお母さんから感じて、そこに惹かれたんだって話してた。

だからお父さんは与えられるだけの人間にならないように、家事も徒歩での登校も許してくれてるんだろうな。

私にいろんな世界を見せてくれるお父さんとお母さんには、感謝しないと。


そんなことを考えていると、剣ちゃんがふっと笑う。


「お前、初めて会ったときから、お嬢様って感じじゃなかったもんな」

「え?」


どういう意味だろう。

それによっては、私に品がないってことに……。

問うように剣ちゃんを見れば、懐かしむように遠い目をして頬を緩めている。


「金持ちのお嬢様なら、守られるのが当然って顔するんだろうなって思ってたのによ。『ありがとう』って感動してくるし、予想が外れた」

私たちが初めて会った日、そんなこと考えてたんだ。

「お嬢様だって、感謝くらいするよ?」

「お前が特殊なんじゃねぇの? 正直、ときどきお前がお嬢様だってこと忘れる」

「えっと、それ……ほめられてるのかな?」

「おう。お世辞と損得勘定で塗り固めたような、上っ面な態度をとらねぇお前といると、居心地がいいんだよ」


少し気恥ずかしそうに耳の縁を赤くしている剣ちゃんの腕に、私はたまらず抱きつく。


「ふふっ」

「笑うんじゃねぇ」


剣ちゃんは照れ隠しなのか、私の頬を軽くつねって引っ張った。


「うー、む、むひへふ」

無理ですって言いたいのに、うまく言葉にならない。
笑わないように、顔に力を入れてみよう。


「むー、ふふふっ」


頑張って真顔になろうとするけれど、ダメだった。

なにをやっても、ニヤけちゃう。

それどころか、声を出して笑っていた。


「……ったく、浮かれすぎだろ」


どうしても顔がゆるんでしまう私に、剣ちゃんは脱力する。


「だって、剣ちゃんといるんだから、仕方ないよ」


抱きついていた腕に頬をすり寄せると、剣ちゃんの頬が瞬時に赤く染まる。


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