明治禁断身ごもり婚~駆け落ち懐妊秘夜~
憎悪と愛のはざまで
それから三カ月。
津田紡績での仕事はすこぶる順調。

集中力が必要で手も荒れてしまうので、大変でないとは言えない。

しかし、生活費を稼がなくてはならない私は、こうして仕事を与えてもらえることがなによりも助かった。


一ノ瀬さんは時折工場に足を運び、私のことも気にかけてくれる。

佐木さんはあの日、病院を訪れた警察官と話をしてくれたらしく、私はたしかに真田進太郎の娘だが事故のことは一切知らず、実家も出ているので関係がないと話してくれたとか。

どうやら父も私は無関係だと証言していて、両者の話が一致したため捜査の対象から外れたようで、あれからはなにもない。


ただ、事故を起こした使用人と隠ぺい工作をした父は、収監されていると聞いた。

父はもちろんのこと、母や他の使用人たちのことも気になってはいたが、自分と直正が生きていくので精いっぱい。

しかも、私が戻ったところでなすすべがないことは目に見えていて、実家には行っていない。
< 120 / 284 >

この作品をシェア

pagetop