それから津田紡績に男が押しかけてくることはなくなった。
社長も力添えしてくれたのかもしれない。

しかし一ノ瀬さんが気にしているようで、時々藤原さんが声をかけてくれる。


「真田さん、困ってない?」
「ありがとうございます。大丈夫です」


父がしたことは衝撃だったし、そのために思わぬ人生を歩んでいる。
しかし、幸いなことに人に恵まれていると感じる。

あんなことがあったので、信吾さんは私に仕事を辞めたらどうかと提案してきた。

けれど、窮地を救ってくれた津田紡績に少しでも恩返しがしたくて辞めたくないと話すと納得の様子だった。


黒木のお父さまには認めてもらえなかったが、黒木家に行ってから、私も信吾さんもとても穏やかな気持ちで過ごしている。

それは、なにがあっても必ず一緒になるという意志を示すことができたからだと思う。