エリート御曹司と愛され束縛同居
6.勇気と本心
どれくらい乗車していたのだろう。

タクシーを降りるように促された場所は九重グループの系列ホテルだった。

「部屋に連れ込んだりしないから大丈夫」

相変わらず男前な幼馴染みが冗談混じりに言って白い歯を見せた。

昔から私を大事にしてくれている圭太を疑うつもりはないし、ましてやそんな関係には絶対にならないと理解している。


「きちんと話を聞きたいからラウンジに行こう」

明るい調子でどんどん歩みを進める。

仕事で今日一時帰国をし、このホテルが宿泊先だという。

経費での宿泊にしては豪華だと思ったが、どうやらモニター的な役割も担っているらしい。

都心の真ん中にあるこのシティホテルは周囲を豊かな自然が取り囲み落ち着いた雰囲気を醸し出している。

施設内はサービスが行き届いていて、予約がとりにくいホテルとして有名だ。

このホテルのラウンジにはお酒ではなく紅茶やコーヒーのサービスもあるのでお酒に弱い人の利用が多いと聞いた記憶がある。

午後九時近い今はロビー自体に人気が少なく十階フロアにあるラウンジ内はさらに落ち着いた雰囲気を漂わせていた。

ウェイターのひとりに話しかけた圭太はそのまま私を店の奥へと連れて行く。

案内された場所は座り心地の良さそうなソファセットの置かれた小さめの個室だった。

瞬時にそこまで配慮してくれた気遣いには脱帽だ。ここなら人目につきにくいだろう。

水を給仕してくれたウェイターに圭太が注文をすると、優雅に一礼をして出て行った。
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