初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
余裕のない男 柊哉side

香子のいない家に帰る気にはなれずに、いきつけのバーに足を運ぶと先客がいた。

「来てたのか」

「お疲れ」

カウンター席にいた真田は、自分のグラスを持ち俺の後に付いて奥の席に移動する。

ソファーに座り上着を脱ぐなり、遠慮ない質問を投げかけられた。

「奥さんとは仲直りしたのか?」

「そもそも喧嘩をしていない」

じろりと睨みながら答えると、真田は大げさに肩をすくめた。

「あの日のお前相当機嫌悪くなってたけどな。彼女に何も聞かなかったのか?」

「聞いた。新入社員の件で進藤に相談していたと言われた。お前が注意をしたんだろ? もう解決したそうだ」

「え? お前その言い訳信じたのか?」

残念そうな眼差しを向けられ、ムカムカとする。

今夜は、たくさん飲んでしまいそうだ。

酔えば少しは気分が良くなるかもしれない。
運ばれて来た酒をグイッと煽ったが、全く酔えなかった。


真田に言われなくたって、香子が肝心なことを言っていないのは気付いている。
< 156 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop