幼馴染でストーカーな彼と結婚したら。
10章:私が幼かった頃の二人の関係
 なんとなく食欲もなくて、帰ってからご飯も食べずにすぐに寝た。
 そしたら、昔の……ものすごく昔の夢を見た。私が小さな頃の夢だ。

 私は大病院のご令嬢と言う割に、いろいろと残念な子どもだった。
 頭はそんなに良くなかったし、別におしとやかでもなかった。いや、おしとやかではない、というレベルだとよかったのだが、小学生くらいまでは男子とのけんかでも自分のほうが強かったと記憶している。
 喧嘩でボコボコにした男子の両親が家にクレームを言いに来て、私が母にこってり怒られた記憶もある。今考えても非常に残念なご令嬢だ。医者になれなかったのも無理はない。

―――そんなある日。
 健一郎の家の前で待ち構えていた幼い日の私は、高校から帰ってきた健一郎の顔を見るなり、目を輝かせた。しかし、健一郎の顔が浮かないことに気づく。

「健一郎! どうしたの? 元気なさそうだね。誰かにいじめられたの? 三波強いからまかせて! 健一郎のこと、私が守ってあげる」
 私は腰に手を当て、偉そうに健一郎に言う。健一郎は少し戸惑った表情をした後、
「えっと……とりあえず、ケンカはいけませんよ? 三波さん」
「健一郎まで大人みたいなこと言うのね」
「僕はまだ大人ではありませんが……三波さんよりはちょっと大人です」

 小さな私はぷう、と頬を膨らませる。
 そんなことを言われるたびに、健一郎と私の距離が大きいのを実感するようで嫌だった。近くにいたいと、勝手に思っていたのだ。

 とはいえ、その時の私は、その意味もきちんと分からず、なんとなく不快だっただけだが。
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