俺様副社長は愛しの秘書を独占したい
気づいてしまった気持ち
「いや~、昨日の瑠璃ちゃんは最高にかわいかったな。俺に必死にしがみついちゃって。泣き顔もまたグッときたよ」

 頼まれた珈琲を運ぶと、上機嫌で言われてタジタジになる。

「……もう勘弁していただけませんか?」

「えぇーどうして? 俺はもう一度瑠璃ちゃんに甘えてほしいんだけど。なんなら今でもいいよ。ほら、おいで」

「いきませんから」

 手を広げた副社長にきっぱり言うと、声を上げて笑い出した。
 昨日助けてくれた彼はあんなにカッコよかったのに……。すっかりいつもの調子に戻った副社長を見て、泣き顔を見せたことが悔やまれる。

 昨日、私は人前で初めて泣いてしまった。それも副社長の腕の中で。
 私が泣き止むまでずっと抱きしめてくれて、家まで送ってくれた。最後までずっと心配し、『怖くなったらいつでも呼んで。飛んでくるから』と言って。

 あれほど怖い思いをしたのに、自分でも驚くほど副社長の胸の中で泣いたら恐怖心は消えたんだよね。
 今日も副社長が会社にいるって安心感があったから、こうして出社することができたんだ。

 いつの間にか私の中で彼の存在が変わっていたのかもしれない。助けてほしいと望んだのも、甘えたいと思ったのもその証拠。
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