策士な課長と秘めてる彼女

蒼井柊(あおいしゅう)3歳。

ジャーマンシェパード、雄。

去勢は済ませているが、心はれっきとした雄だ。

警察犬や麻薬捜査犬に抜擢されるほど優秀な知能を持つ大型犬。

尖った耳に凛凛しく賢そうな顔つき。

引き締まった体躯は、見るものを魅了してやまない。

日葵もまた、そんな柊の逞しさと優しさ、男らしさに陥落した一人だ。

「何故、彼氏ではなく飼い犬に振り回されていると否定しなかった?」

日葵は砂浜に座ったままの状態で、横に立った陽生を見上げた。

相変わらず、威嚇を続ける柊に

「柊、lie down」

と日葵が声をかけた。

すると、柊がおとなしく伏せの態勢で、日葵の前に座った。

「へえ、お利口だな」

馬鹿にされたと思ったのか、柊が首を上げ、ピクリと耳を立てて陽生を見た。

「柊」

日葵が柊の頭を撫でると、眩しそうに目を細めたあと、最終的には目を閉じた。
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