このお見合い、謹んでお断り申し上げます~旦那様はエリート御曹司~
金持ちとイケメンは信用しません



“誰か、嘘だと言ってくれ”


ーー逢坂百合(おうさか ゆり)。

歳は27。広告代理店に勤めるごく普通のOL。

そしてここだけの話、その素性は生粋のお嬢様であり、父は古くから由緒ある家の跡継ぎで、大手建設会社の社長も務めていた。母と七つ下の弟との四人家族はいつも笑顔が絶えず、食卓にはいつもレパートリー豊富な母の手料理が並び、まさに金に困る生活とは無縁であった。

しかし、その平和は長くは続かなかった。

十五歳の時に、家に鳴り響いた電話越しに告げられたのは出先で事故に巻き込まれたという両親の訃報。まるで仕組まれたかのように、指導者を失った父の会社は一気に業績が悪化し事業は失敗。追い討ちをかけるようにして、逢坂家は多額の借金を抱える地獄に転落してしまったのだ。

こうして、一夜にして全てを失った私は、当時まだ小学生だった弟と共に母方の祖母に引き取られた。

それからは借金の返済と学費を稼ぐために青春をアルバイトに捧げ、気づけば“年齢=彼氏なし”。就職を機に祖母の家を出た後も、仕事に明け暮れる毎日に男性との出会いなどない。やっと“いいな”、と思える人を見つけても、恋愛経験がないせいか、いまいちアプローチ出来ずに時間だけが過ぎていく。着々とアラサーの階段をのぼる私は、恋愛もせずに枯れていく現状に、たしかに焦っていた。

だが、今はそれどころではない。

この時、私の頭を占領していたのは、呪文のようにガンガンと響く危険信号である。
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