Q.I(きゅうあい)~短気で無垢で、天使な君を~
プロローグ


『ねぇ。──あんたもしかして、矢井戸桂太?』


 高校入学とともに果たした、偶然すぎる再会。


『ねぇ、あんた、何で急に──…。──……。───』


 俺を見つけるなり、茅野柚葉はまるで責め咎めるように“あること”を告げて、俺を見据えてきた。

 まるで問い詰めるかのように──。


 ……いやいや、待って。これはタイミングが悪すぎる。

 運命の神様が俺らを引き合わせてくれた事には感謝するけど、何も今このタイミングじゃなくてもよくね?って思う。

 呆気に取られて何も答えられないでいる俺に、柚葉は幻滅したようにため息をついては──。

「もういい」

 そう一言告げて、立ち去った。


 ……ほら、やっぱそうなるよね。

 だって俺、今──。


「ねぇ、ケータくん、今の子だぁれ?」
「ねー、めっちゃ可愛かった! ちょっと怒ってた風?」
「まさか彼女……とかじゃないよね?」


 複数の女の子に、囲まれてんだもん。



「えー、そう見える?」


 なのに、焦るでもなく弁解するでもなく、女の子たちに振り向いてデヘッと笑ってしまう俺。

 普段ならこんな状況は願ってもあり得ない事だから、有頂天になっていたのは確かだし、冷やかされて調子に乗ったというのもある。

< 1 / 43 >

この作品をシェア

pagetop