人生の続きを聖女として始めます
エルナダ暦 1025年

転移

眩しい光は、その後すぐに収まった。
だけど、目がくらんでいた私は、顔を手で覆ったまま、暫くそこを動けなかった。

「おお!!来てくださった!!ありがたい。我が願い、満願のこの日に叶うとはなんたる僥倖か!」

誰かの声がした。
それは、光にのまれる時に聞いたあの声だ。

「………誰??」

手をどけて辺りを確認しようとしたけど、光のダメージは案外大きかった。
うすぼんやりとした中に、ポツンと立っている布を頭から被った誰か……としか認識出来ない。

「聖女様でございますね?待っておりました。私は、リブラと申します。この神殿の大神官、責任者でございます」

「神殿?大聖堂では?」

目を瞬かせながら、質問を返す。

「大聖堂?はて、そんな名前で呼ばれたことはございませんが……」

私はもう一度目を閉じた。
これは、悪い夢かもしれない。
あの悪夢と同じ様な何か。
改めて目を開ければ、ちゃんと目が覚めてベッドの上にいる……はず。
そう信じてゆっくりと目を開いた。

「どうしました?聖女様?ご気分でも悪いのですか?」

みるみる蒼白になる私を見て、リブラと名乗る男が言った。

「うそ…………そんな、はずない……私は………私は………」

私はあの日、確かにこの世界で死んだのに!?
< 17 / 238 >

この作品をシェア

pagetop