人生の続きを聖女として始めます

祝宴

ガブリエラと別れてから、私は部屋で聖女の衣装に着替え、レーヴェとエスコルピオと共にリブラと待ち合わせした場所へと移動した。
神殿部所属の聖女は、大神官が後見人となり、リブラを介して獅子王に紹介されるということになっている。
そのためレーヴェが住む南館と、神殿の中間である中庭で待ち合わせた。

「殿下ー!ジュリ様ー!」

リブラは私たちを見つけると軽やかにやって来た。
手をブンブンとふって、スキップするように跳ねる姿は、まさに小動物。
子ウサギのダンスのようだな、と思わず吹いてしまった。

「ああっ!緊張しますね!!さっきから心臓がバクバク言ってるんですよー」

リブラは大袈裟に胸に手を当てた。

「どうしてリブラが緊張するのよ?」

「どうしてって!?獅子王陛下に会うんですよ?私のような成りたての大神官がおいそれと会える方ではないですから……」

「そんな大層な……」

呆れて言う私に、レーヴェが首を振って答えた。

「お母様、それは事実です。僕だって父上様に会うのなんて年に数回ですよ?」

「はぁ?何で?獅子王ってそんなに忙しいの?」

私はリブラを見た。
すると彼は肩を竦めて、溜め息をついた。

「ええ。戦と政治犯バートラム・スタンフォードを追うのにお忙しいのです。陛下はバートラムのことしか頭にないようで……」

そこまで言って、リブラはハッとして私とレーヴェの後ろを見た。
たぶん、エスコルピオの目が気になったのね。
余計なことを言うと粛清されるらしいから。
でも、エスコルピオはそんなことどうでもいいかのように、私とレーヴェの後ろから一歩も動かなかった。
胸を撫で下ろしたリブラは、気を取り直して私達を先導し、大広間に向かってヒョコヒョコと歩き始めた。
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