嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
第3話
【第3話】


足が鉛のように重い。
乗りかかった船に片足を突っ込んだまま、引きずって歩いてる自分を想像してしまう。
決断力のない、優柔不断な自分が嫌で嫌で仕方なかった。


「おはようございます、長瀬さん」


翌日、私はエレベーターで本社ビルの最上階に行き、秘書室のデスクにいた長瀬さんに声をかけた。


「茅部さん、おはようございます」
「櫻葉社長にお会いしたいのですが」
「少々お待ちください」


レンズの奥の瞳を細め、長瀬さんは受話器を取る。
私はその間、社長室の重厚な扉を気が遠くなる思いで見つめた。


「お待たせしました。社長は大変お忙しいのでご用件は二分でお願いします」
「ににに……っ」


二分⁉︎
こっちは大事な人生の選択を迫られているのに、二分しか話せないの⁉︎


「どうぞ、こちらです」


唖然としながらぎこちない動きで足を進め、長瀬さんの案内で私は社長室に入る。


「失礼します」


初めて入る社長室は、総務部のフロアと遜色ない広さだ。
大きな窓の外にはまだ一日が始まったばかりの霞みがかった空気に包まれた大都会のビル群が広がっている。

薫社長は電話中だったらしい。人差し指を唇の前で立て、こちらに一瞬シッとやって、片目を細めた。それからまたすぐに、流暢な英語で話し始める。
まるでドラマの一場面のような、スマートな仕草だった。

長瀬さんが仰々しく一礼して社長室を出て行ってしまい、私は置いてけぼりになった。
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