嘘つきな恋人
プロローグ


唇が、そっと触れた瞬間に、

抑えていた感情が流れ出すように溢れて

ポロポロと閉じた瞼から、涙になって落ちた。


それはまるで決壊したダムのように、

止める事なんて出来ない。


こうなる事は必然だった。

だから、必死に抑えていたのに…


押し倒されたソファの上で

ポロポロと止まらぬ涙を流す私の頬に、

優しく手の平を当てると

その指先で私の涙を拭う。


「…ごめん…、ごめん…。」


そんな言葉だけを呟く。

私たちは何度も、何度も、口付けを交わした。


もう、後戻りなんて出来るわけなかった。




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