溺愛アフロディーテ 地中海の風に抱かれて
第3章 アマルフィの憂鬱
 私はベッドから抜け出し、バスルームでシャワーを浴びた。

 すべてを済ませ、バスローブをまとってソラーロ山を正面に望む南側のテラスに出てくつろいでいると、目覚めたミケーレも出てきた。

「チャオ、ミサキ」

「ボンジョルノ」

 髪の毛がぼさぼさだ。

 髭も生えていて全体的にだらしない雰囲気が漂う。

 海の色が溶け込んだような青いシャツの似合うミケーレにもこういう一面がある。

 普通の人だと言っていた通りだ。

「どうしたんだい?」

「何が?」

「楽しそうだよ」

「あなたのことを考えていたからよ」

 ミケーレの頬が紅潮する。

「君にそういう風に言われるとイタリア男でも照れるね」

「シャワーでも浴びてきたら?」

「そうするよ」

 彼は私と頬を触れあわせてからバスルームに向かった。

 髭の感触が昨夜のことを思い出させる。

 鼓動が高まる。

 部屋に戻って冷蔵庫から炭酸水を取り出してコップに注ぐ。

 バスルームから鼻歌が聞こえてくる。

 私はその陽気なメロディを聴きながら弾ける炭酸の泡を味わっていた。

 朝食はホールに用意されていた。

 昨日と同じクロワッサンを用意してくれるパオラさんと顔を合わせるのが恥ずかしい。

 絞りたてのオレンジジュースを飲んでいると声をかけられた。

「カプチーノはいかが?」

「はい、お願いします」

 ミケーレが周囲を見回しながら人差し指を立てる。

「僕はあれを……」

「はいはい」

 パオラさんがこっそりとうなずきながらキッチンへ戻っていく。

 あれって何だろう。

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