「フェデリカ様、ご主人様がお呼びでございます。」

侍従のローランドに声をかけられたときフェデリカは侍女のリュカと庭を散策中だった。
神殿から攫われるようにしてここへ来てから、さらにひと月が経った。
不本意にここへ連れてこられたとはいえ、フェデリカは初めて見る外の世界に夢中だった。
今もヴィーにもらった虫の図鑑を片手に、珍しい蝶々の観察をしていたところだ。

「…お父様が…?」

フェデリカは眉をひそめる。
父とは依然距離があるままだった。
大きな屋敷では会おうとしない限り互いに顔を合わせることも少ない。
ましてや一年の半分を都で過ごすという父はフェデリカとの再会後すぐに都へ旅立った。
都では昨年末、前皇帝が崩御してその息子であるヴィンセント帝の即位を控えていた。
都での所用を済ませて父が屋敷に戻ったのが数日前だ。