ママですが、極上御曹司に娶られました
1.私の見つけた平和



「おはようございまーす」

 外まで明るい声が響く、朝八時の『おひさま保育園』。私は今日も息子の手を引き、ここへやって来た。
 玄関を入ると、すぐに声をかけてくれたのは鈴元先生。若くて元気な担任の女性だ。

「おはようございます。新くん、元気かな?」

 私の手を握っていた息子はぱっと手を離し、靴を脱ぎ散らかしながら先生の腕の中へ飛び込んでいった。

「先生、おはよう。僕、すごい元気」
「まあ、よかった。今日はちょっと遠い公園まで行くからね。元気ためておいてよ~?」
「全然平気だよ」

 息子の新は得意げに笑い、それから私を見てまずいという顔をした。脱ぎ散らかした靴を指差している私を見つけたからだ。

「ママ、靴……」
「片付けなさい」
「ママやって」
「やりません」

 たぶん私の返答がわかっていたのだろう。息子はおとなしく戻ってきて、渋々靴を下駄箱にしまう。
『きりえ あらた』と名前がつき、テントウムシのシールがついている棚だ。

 中に入ると、年少組から年長組までが縦割りで保育されているクラスが並ぶフロアになる。新は年中組のたんぽぽグループだ。
 同じく名前とテントウムシがついた棚に荷物をしまい、ふたりで連絡帳を先生に提出したら、私のやることは終わり。

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