短編読み切り青春純愛小説 『アオハル』
1時限目 『本命はキミ!』 

あたしは、         
橘 明日香(たちばな あすか)。

内気でシャイな15歳。
高校1年生。
春の木洩れ日の中、桜が満開
のこの日、県立C高校に入学
した。

あたしのクラスには、中学校
からの顔見知りの女の子は一
人もいない…。
なんだか不安が募る…。

内気でシャイなあたしは、自
分から『友達』を作るなんて
…、かなりの試練だった。

そして、この1-Bの最初の席
は、平凡な出席番号順、あた
しは『た』なので、教室の中
央の全七列中の3列目の最後
尾だった。

まあ、視力はいいから、黒板
の文字は見える。
しかし、知り合いがいないの
はあたしを更に無口にさせた
…。

入学式から3日経った、午前
中、最後の4時限目、あたし
の運命を変える出来事が起きた…。  

「ねぇ、次の授業の国語なん
だけどさ、教科書忘れてさ
…。
見せてくれない? た、橘だ
ったよね!橘 明日香さん」 

突然、右横の男子から、話し
かけられた…。

あたしは、今までまともに
男子の顔や目を見て話した
ことは皆無だった…。

内気でシャイな性格の招い
たあたしの『変えたい部分』
…。

あたしは、勇気を出して、
その男子の顔を見て視線を
合わせてみた…。 

あたしは…その男子に『一
目惚れ』&『初恋』をして
しまったのだ! 

身体に電気が走ったような
鮮烈な稲妻を感じていた! 
笑顔が爽やかな男子。そう
例えるなら、フィギュアス
ケートの羽生結弦くんに似
ていた。     

「俺は、佐藤龍二。まあ、
最初のホームルームで、
全員が自己紹介したから
覚えているよね? 橘っ
て、乃木坂46の、斎藤飛
鳥ちゃんに似てない?
似てるって、よく言われ
るでしょ?
明日香=飛鳥だし。」                   佐藤龍二くんは、ハニカミ
ながら笑った。

なんとも例えようのない爽
やかな笑顔だった。

しかし、内気でシャイなあ
たしは、佐藤くんといっぱ
いお話ししたいと思ってい
るのに…。

言葉が出ない…。
そして、その思いに反して               

「教科書は見せるわ。斎藤
飛鳥…? 知らない…。あま
り、テレビを、見ないか
ら…。」   

あたしは、素っ気なく返事
をししまった。

すると、佐藤くんが、スマ
ホで斎藤飛鳥ちゃんの画像を
検索し、あたしに見せてくれ
た。 

「やっぱり、斎藤飛鳥ちゃ
んだよ! 小顔で、黒髪が、
ロングヘア。どう?橘さ
ん?」               

「う…、うん。確かに似て
るかも…。さ、佐藤くんは
フィギュアスケートの羽生
結弦くんに似ているよね?」 
               あたしは、勇気を出して、
佐藤くんに話しかけてみた
…。                       

「羽生…結弦…?そっか?あん
なに、爽やかなじゃないぜ! 
アハハ…橘って、面白いヤツ
だな!これからも仲良くし
てくれよな!」            

何故か、佐藤くんには、あた
しは『面白いヤツ』に見えた
ようだった…。

しかし『一目惚れ』&『初恋』
の男子に、なにかしら興味を
持って貰ったのは、あたし的
には、いわゆる、『爪痕を残
す』事には成功したようだっ
た。 
              
4時限の授業時間、あたしは
先生の言葉が全く耳に入らな
かった…。

佐藤くんとあたしの机をくっ
つけて…。

肩と肩が触れあう距離で、国
語の授業時間を過ごしたのだ
…。

緊張と嬉しさ…。

人生初めての複雑な感情…。

その授業時間は、あっと言う
間に過ぎ去った…。      

「橘さん、ありがとな!また
忘れたら、宜しくな!」 
               佐藤くんは、一言、あたしに
お礼を言うと、机を元の場所
に戻した。

あたしの『至福』の時間は終
わった…。

あたしは、クラスには、まだ
ランチを一緒にする女の子は
いない。

暫くして、佐藤くんが、あたしの机の上に、購買部一番人気の焼きそばパンを1個、置いてくれた。     

「教科書のお礼だよ。また、宜しくな!」  

佐藤くんは、そう言うと同じク
ラスの男友達と廊下に姿を消した…。           

5時限、佐藤くんが、ルーズ
リーフを1枚ちぎりったメモ
をあたしの机に投げてきた。
メモを見ると、佐藤くんのラ
インID が書かれていた。

あたしは、困惑の表情をうか
べ浮かべつつも、内心、嬉し
くて、数学の先生の目を盗ん
で、スマホのラインを開き、
ID検索し、登録した。

そして、帰宅後、色々考えた
が佐藤くんとラインをするこ
とにした。                     
あたし:今晩わ!                     
すると直ぐに佐藤くんから、
ラインが帰ってきた。  

佐藤龍二:今晩わ!今日はあ
りがとな! 

あたし :うん。これからは、
忘れずに!

あたしは、素直に『また忘れ
てね』とは書けなかった…。 
               それから、佐藤くんとは、席
も隣同士でもあり、クラスで
も、よく話すようになり、ラ
インもほぼ毎日するようにな
った。

佐藤くんは、ガソリンスタン
ドでバイトをしているそうだ
った。                     
しかし、ラインはするものの
何の発展もお互いからの提案
も無く、新年を迎え、時は流
れ2月13日になった。

あたしは、バイト後の佐藤く
んにラインをした。
      
あたし :バイト、お疲れさま
。明日は、バレンタ
イデーだね!  
               佐藤龍二:あ、そうだね。橘
は俺に、チョコく
れるのか?  
               あたし :うん。ぎ、義理だよ。
だよ!義理チョコだ
よ。
あ、あたし、好きな
人いるし…。    

あたしは、やはり、内気でシャイな性格は、修正出来ていなかった…。
素直に『本命』とはライン出
来なかった…。
それでも、佐藤くんは大喜び
で                

佐藤龍二:やりー!今年は、
チョコありのバレ
ンタインデーだ!
ありがとな!橘! 
橘の好きな人って
誰なんだい? 
              
あたし :それは、内緒だよ。
チョコは、朝イチで
机に入れておくから!               

佐藤龍二:了解! Thank You!                 
結局、大好きな佐藤くんに『本命』とはライン出来なかった…。 
自分が情けないと、つくづく
感じた…。                     
2月14日。

あたしは、早めに登校し、生まれて初めての手作りチョコを、佐藤くんの机の中に入れた。

暫くして、佐藤くんが登校してきた。佐藤くんは机を探りチョコ
を見つけると、笑顔で、あたしに答えてくれた。       

その日の夜のライン…。                   
佐藤龍二:橘、ありがとな!
チョコ。これ、
手作りチョコだよ
な?本命用じゃない
ん? 

あたし :あ、あ…、そ、それ
は、本命のチョコに
ならなかった、形が
歪(いびつ) な、
チョコばかりだよ…。
               あたしは、素直に『佐藤くんが本命』と言えなかった…。  
               佐藤龍二:そっか。なかなか
旨かったよ。あり
がとな! 橘の誕生
月は、いつ?          
何気に、佐藤くんが聞いてき
た。       

あたし :7月。 どうして?         
佐藤龍二: い、いやいや…た
だ、 聞きたかっ
たからさ。 
               その日から、佐藤くんに対して、学校では意識して、ギクシャクし、ラインも、マンネリ化していた…。

時は流れて3月13日。夜のラインで…。

佐藤龍二: 明日、放課後、
学校 の屋上に来て
くれないか?                   
あたし :うん?いいけど…。
どうして?              
佐藤龍二:バレンタインのお
返しがしたいから
さ!必ず、来いよな!              
あたし :うん…。わかったよ。
必ず、行くよ。

ライン終了後、あたしは明日のホワイトデーに、佐藤くんに『告白』することを決意した。

そして、3月14日の放課後。

あたしは、緊張しながら、学校の屋上に行った。

すると、既に佐藤くんが待っていた。

佐藤くんは小さな箱をあたしに差し出した。 

あたしは、その箱を開け
た…。   

「あ!ルビーのネックレス
だ!」       

思わず、あたしは歓喜をあげた。           
「橘の誕生石が、ルビーだからさ!安物だけど…。バイトで貯めたお金で買ったんだ!」 

あたしは、もやもやしていた気持ちが、なんだか晴れてきた…。

そして勇気を振り絞り…。    
「ありがと。佐藤くん。…実
はバレンタインのチョコ…。
佐藤くんが…ほ、 『本命』
なんだ!あたしが大好きの
は、佐藤くんだ!
あたしと、付き合って下さ
い 。ダメですか?」                    あたしは初『告白』をした。すると、佐藤くんは、ハニカミながらも…。            

「お、俺も…橘が、大好きな
ん だ! 教科書忘れたの
も、橘に、に近づきたかっ
たからなんだ! 気づいて
た?」                      
「え? 全然…、気づかず…笑。
龍二…。 大好きだよ。」 
               そう、あたしは、佐藤くんを初めて、下の名前で『龍二』と呼んだ。
実は、随分前からあたし達は『両思い』だったのだ! 

3月14日…、あたしと龍二の交際記念日になった瞬間だった…。       
黄昏時に、黄砂が校庭を舞っ
ていた…。  

『アオハル』

【本命はキミ】
おしまい。
          


  



      

< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop